研究課題/領域番号 |
23656327
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
池本 良子 金沢大学, 環境デザイン学系, 教授 (40159223)
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研究分担者 |
高野 典礼 石川工業高等専門学校, 環境都市工学科, 講師 (00369969)
中木原 江利 金沢大学, 環境デザイン学系, 博士研究員 (00547193)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 汚泥処理 / 硫酸塩還元 / リン回収 |
研究概要 |
本研究は,下水汚泥の有効利用法の一つとして,硫酸塩還元条件で汚泥を分解し,メタン発酵に利用しやすい低分子有機酸に変換するとともに,溶出したリンをリン酸カルシウムとして汚泥内に蓄積させ,リン含有量の高い汚泥肥料を生成することことを提案し,基礎的な研究を行うものである。 まず,硫酸塩還元条件による余剰汚泥の分解性と,溶出したリンのカルシウムによる不溶化について,回分実験により検討を行った。その結果,硫酸塩還元速度は遅いが,硫酸塩還元に伴い,酢酸が生成され,リンが不溶化することが示された。また,温度条件が高いとメタン発酵が進行し,生成した酢酸が消費されること,温度条件が低いと硫酸塩還元活性が著しく低下することが示されたことから,最適温度は30度付近と判断した。 次に,連続装置を作成し,運転を行ったが,装置のトラブルで定常な運転が困難であった。そこで,現在,装置の基質投入方式を手動とした半連続方式に変更し運転を行っている。連続装置は,容積1Lのせパラブルフラスコを用いて,30℃の水浴内で撹拌条件で培養した。1日1回1/3の汚泥を入れ替えることで,SRTおよびHRTを3日に設定した。その結果,硫酸カルシウムを添加した系では,硫酸塩還元が進行し,有機酸の生成が認められた。また,溶存態のリン酸塩濃度が,硫酸カルシウムを添加しない系列と比較して,極めて低いことから,放出されたリンの不溶化が起こっていると推定された。 別に,固形有機物であるでんぷんを基質として,硫酸塩還元微生物を集積し,微生物叢の解析手法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微生物解析手法に関しては,でんぷんを用いて馴致した微生物を用いて順調に進んでいる.硫酸塩還元条件による汚泥の分解については,回分試験を終えており,連続試験に関しては,当初装置のトラブルで実験が遅れたため,メタン発酵実験の開始が遅れたが,現在装置は順調に動いており,今後も,順調に進むものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画は以下のとおり1)硫酸塩還元による汚泥の分解とリンの不溶化:実験装置の運転を継続し,定量的なデータを取得する。さらに,硫酸マグネシウムを添加してMAPとしてリンを回収する方法についても検討を行う。さらに,硫酸カルシウムの代替として,石膏ボードの利用可能性についても検討を行う。2)可溶化汚泥のメタン発酵試験:メタン発酵処理装置を作成し,1)で生成した汚泥を添加した半連続実験を行い,メタン回収量を明らかにする。3)微生物叢の解析:今年度検討した微生物解析手法を,1)の汚泥に適用し,汚泥文官界に関与する硫酸塩還元微生物叢を明らかにするとともに,モニタリング手法を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)実験装置作成用の消耗品:硫酸塩還元装置に関しては,既存の消耗品を組み合わせて作成したために,使用しなかったが,次年度は,メタン発酵装置作成のためのポンプや器具類が必要である。2)微生物解析用消耗品:今年度は手法の開発を行うために一部購入したが,次年度は,それを実際の汚泥に適用することから,大量に購入する必要がある。3)分析用消耗品:分析カラムなどが劣化してきたために,購入が必要である。4)実験補助謝金・旅費:実験が順調に進んでいるので,実験補助のための謝金を使用する。また,成果発表のための旅費も使用する計画である。
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