物質が微生物による分解を受ける際,一般的に数mg/Lつまりppmレベルでは効率よく分解される(Monod式での飽和定数:Ksがppmレベル)ことが知られている.しかしながら,微生物はさらに低濃度域である極微量ppbレベルの分解も効率的に行う(Ksがppbレベル)ことが、多くの研究によって示されている.しかしながら、その様な能力を有する微生物、貧栄養細菌の現状での利用はほとんど無い.そこで,本研究では,貧栄養細菌による分解現象を把握すると共に,その利用技術の開発を目指す。 研究では,貧栄養細菌としてフェノール資化細菌Cupriavidus sp. TW2株を単離した.本菌株は,フェノール誘導されるフェノールヒドロキシラーゼ(PH)によってトリクロロエチレン(TCE)を分解する.本菌株の分解能を常時発現させるため,PH遺伝子群の上流にtacプロモーター(Ptac)を相同的組換えによって導入した.作製された組換え体TW2-P株はTCE分解能を構成的に発現し,フェノール誘導されたTW2株より高い分解能を示した.また,TCEを環境基準である,30ppb以下に分解した.加えて,本組換え体の環境中でのCell レベルでの追跡を可能にするため,PH遺伝子群下流に緑色蛍光タンパク質をコードするGreen Fluorescent Protein (GFP)遺伝子を,同様に相同的組換えによって挿入した.作製されたTW2-PGF株は,蛍光顕微鏡下で緑色蛍光を発する細菌として,Cellレベルでの観察が可能となった.また,この時GFP遺伝子の導入は,ppbレベルのTCE分解能に影響を与えず,高分解能を維持した.
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