研究概要 |
水生植物を用いた連続および半連続浄化試験を行い、以下のような知見を得た。 1)ペンタクロロフェノール(PCP)をモデル汚染物質とし、異なる鉄イオン濃度条件下で行った半連続浄化実験では、鉄イオン濃度が数十mg/L以上および無添加条件では植物の増殖が阻害され、連続的にPCPを処理することができなかった。 2) 鉄イオン濃度を数mg/L程度の条件に設定すると、植物量は長期間(数か月以上)安定して維持され、体内過酸化水素(H2O2)の減少およびPCPの除去が測定された。しかしながら、その除去量は前年度までの回分実験から予想される量より少なかった。 3) 人工湿地内で鉄化合物を植物に供給するための鉄含有ブロック担体を作製して、鉄イオンの溶出速度について検討した結果、溶出速度は担体内の細孔率およびpHに大きく影響され、特に担体内のpHを弱酸性に保つことが安定した鉄供給を行ううえで重要であることがわかった。 4) H2O2を高濃度で蓄積する熱帯植物を植栽した人工湿地を用いて寮排水の浄化試験を行った結果、上記の鉄含有ブロック担体あるいは鉄化合物を高濃度で含む土壌の添加・無添加に拘わらず、BOD, SS, 大腸菌等の一般水質項目および排水中に含まれるほとんどの抗生物質が浄化された。本研究より、鉄化合物の添加によりバイオフェントン反応が進行することが示されたが、最適な鉄添加条件については今後さらに検討が必要である。
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