研究課題/領域番号 |
23656339
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
畑中 重光 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00183088)
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研究分担者 |
三島 直生 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30335145)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 外装タイル / 補修・改修 / タイル直貼り工法 / 含浸・造膜カバー工法 / 高含浸性強化剤 |
研究概要 |
既存建築物に使用されている外装タイル壁(以下、外装タイル)の劣化・施工不良は、1989年の北九州市内のビルの剥落事故の例に見られるように、人命を奪う重大な事故につながることが懸念される。公共建物で使用されてきた下地モルタルを使用する外装タイルについては、建設改修工事施工監理指針(建設大臣官房官庁営繕部監修)にその補修・改修工法が示されている。しかし、低コストゆえ現在の民間建物のほとんどに採用されている「タイル直張り工法」については、現在のところ補修・改修工法の指針類が存在しない。この「タイル直張り工法」の補修・改修の難しさは、タイルの個々のピースがばらばらに挙動してしまうことにある。メーカが独自に提案する工法もあるが、安全性、経済性、美観などの問題を残している。 これに対して本申請研究では、申請者らが過去の科学研究費補助金を受けて開発した「多孔質材料に対する高含浸性強化剤」を活用し、外装タイルを目地も含めて強化・一体化する「含浸・造膜カバー工法」という、これまでに提案されている外装タイルの剥落防止工法に比べて、全く新しい発想に基づく合理的で低コストの補修・改修工法を研究・開発しようとするものである。 本年度の研究の結果、含浸・造膜カバー工法に用いるための高含浸性強化剤の最適調合の選定実験を終え、プライマ層および造膜層のそれぞれに対して、異なる特性を持つ高含浸性強化剤を得た。さらに、意匠性および耐久性を増すためのトップコートについても選定を終えた。 また、各種の強度特性の評価試験を行うためのタイル接着強度試験器の設計および製作を行い、次年度の評価試験のための予備試験を終えた段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画にて示した、含浸造膜カバー工法に用いる高含浸性強化剤の調合選定、および、各種強度特性の評価試験に用いるための試験装置の開発が順調に完了している。このため、概ね当初の計画通りに順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 造膜する高含浸性強化剤の強度試験および耐久性評価(担当:畑中)研究次年度はまず、タイルおよび目地表面から施工された含浸・造膜剤の面外・面内方向の外力に対する各種の強度試験を行い、含浸の効果の有効性の実証と、含浸・造膜カバー工法の設計のための基礎データを得ることを目指す。さらに、造膜する高含浸性強化剤の耐久性評価を行うために、浮きを生じたタイル層に塗布した供試体に対し耐候性(紫外線+降雨による劣化)に関する負荷を与え、造膜層とタイルの付着強度、タイル目地部の面内の引張強度等の評価を行う。(2) 造膜する高含浸性強化剤の施工方法に関する検討(担当:畑中、三島) 完成した高含浸性強化剤の最適な施工方法を提示するため、塗布方法(刷毛、スプレーなど)、塗布量の設定方法、養生方法などに関する検討を行う。一般に、表層劣化が問題となる構造物の補修を行う際には、高所作業になる場合が多いため、効率が良く、かつ安全性の高い施工方法の確立が重要となる。ここでは、薬剤の粘性、含浸速度、硬化速度などを変数として、施工面からも最適な方法を見出す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、外注役務として耐候性試験のための劣化負荷を与えるための予算として50万円を計上する。また、消耗品としては、小径ドリル作孔試験により含浸深さおよび改善効果の定量的な評価を行うための先端ドリルビット、高含浸性強化剤、付着試験のための治具等で約50万円を計上する。他に、共同研究先との往復交通費として約10万円、実験補助のための賃金で約30万円を計上する。このうち、平成23年度未使用額の22万円については、平成24年度に行うタイルおよび目地に塗布したときの性能評価試験を充実させるために、平成23年度中に行った高含浸性強化剤の調合選定試験での薬剤使用量を減らしたことによるものである。当該経費は平成24年度の消耗品費に追加して予算を作成している。
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