研究概要 |
表面強化により、応力集中部からの脆性破壊を防止できる可能性を、基礎的実験により検討することが研究の目的である。表面強化手法の一例として本研究ではレーザピーニングに注目する。レーザピーニングによる表面強化によって脆性破壊防止の可能性が示されれば、鋼材の部分的な強化による大型鋼構造物の補強というほとんど検討されていなかった分野の研究が注目され、さらに研究が広がると考える。 本年度は単調曲げ試験により、実際に破壊挙動を検討した。靭性が低い鋼材の方が効果が明確に現れると思われるため、使用鋼材として低靭性材(vE0=25J程度)を用いた。試験体として、角形棒鋼の中央部にシャルピー衝撃試験体に用いられているVノッチを加工した応力集中部曲げ試験体を用いた。この試験体に、昨年度選定した2つの照射条件(ピークエネルギー200mJ-スポット径0.8mm-照射密度36Pulse/mm2と20mJ-0.3mm-360Pulse/mm2)でノッチ部にレーザピーニングを施した。比較のためレーザピーニングを施さない試験体も実験を行った。脆性破壊は試験温度により大きな影響を受けるため、試験温度(+40, +10, -20, -50℃)もパラメータとした。試験温度を一定にするため、実験はアルコールもしくはお湯を満たした水槽内で行った。 実験の結果、レーザピーニングの有無および施工条件にかかわらず、-40℃で延性破壊、+10℃および-20℃で延性き裂進展からの脆性破壊、-50℃で脆性破面率100%の脆性破壊が発生した。しかしながら、+10℃での実験でレーザピーニングを施した試験片の方がやや伸びが大きい傾向が見られるものの、最大荷重および伸びに大きな差異は見られなかった。 このように、本件研究で用いた鋼材,試験片形状およびパラメータの範囲では、レーザピーニングによる脆性破壊防止効果は小さかった。
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