新型引張り筋違材を想定した細径鋼棒に関わる繰返し加力実験(1)(2)(3)と地震応答解析を行なった。実験(1)は、新型筋違装置を組み込んだ縮尺約1/3の架構が示す強震時の力学挙動を把握する実験である。この実験によって鋼棒筋違材は圧縮過程での座屈が無く、また引張り過程では即時に引張り応力が生じて紡錘型復元力特性を示すことが確認された。但し、載荷剛性は除荷剛性の約75%であったこと、小振幅の繰返しが続く際は、載荷の初期剛性が低く、スリップに近い性状を示すことが観測された。これは、偏芯輪から加わる側圧で鋼棒に生ずる「くびれ」が強く関係するものである。この「くびれ」に着目して行なった実験(2)により、鋼棒に引張り力が作用し始めると、引張り力の増大に伴って新型引張り筋違装置の主要部材である偏芯輪は回転し始めるが、鋼棒が降伏棚を進む段階に達すると回転は止まり、偏芯輪がしっかりと鋼棒を掴むことを確認した。実験(3)は、新型引張り筋違材を想定した細径鋼棒に材軸方向引張り荷重と材軸直交圧縮荷重を同時に加える2軸加力実験である。このような2軸加力を受けると、鋼棒は「くびれ」が進行し、単に材軸直交圧縮荷重だけの場合に比べ鋼棒径が一層細くなることは予想通りであったが、一連の実験により鋼棒径が細くなる状況をより詳しく捉えることができた。地震応答解析は、3階建て鉄骨造建築物を例としてとりあげ、これに新型筋違装置と従来から多用されている筋違(従来型筋違)の両タイプの引張り筋違を同時に配置し、実験で得られた復元力特性を反映した計算モデルを採用した。筋違用鋼材の総量一定の下、新型筋違装置と従来型筋違の鋼材量を様々に変えて行なった応答計算の結果、新型筋違を増やすと地震応答量は低減するが残留歪みが増大する傾向のあることがわかった。また、全筋違用鋼材量の50%~75%を新型筋違装置とし、残りを従来型筋違とすれば耐震性能が向上し、余震に対しても有効となるとの結論が得られた。
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