研究課題/領域番号 |
23656354
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
瀬戸口 剛 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20226674)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | コンパクトシティ / 木造建築 / 二酸化炭素排出量 / 低層建築開発 / 街なか居住 / 中心市街地 / 市街地更新 / 地方中核都市 |
研究概要 |
本研究は、北海道釧路市の中心市街地を対象に、中心市街地の目標像として、低層および木造を積極的に活用し、木造建築を中心に中心市街地再生を進める、グリーンコンパクトシティ(以下、木造コンパクトシティ)を提案し、その可能性と課題を明らかにする。具体的には以下の5点を明確にした。(1)コンパクトシティの重要点及び木造利用の可能性から、木造コンパクトシティの視点を抽出した。(2)地方都市の中心市街地の現状を整理し、木造コンパクトシティへ向けた中心市街地整備の方向性を示した。(3)釧路市中心市街地の対象地区で、更新モデルを提案した。(4)木造コンパクトシティの評価項目により更新モデルを評価した。(5)釧路市関係団体へのヒアリングから、地方中核都市における目標像の構築へ向けた、木造コンパクトシティの可能性と課題を明らかにした。木造コンパクトシティの可能性としてつぎの5つがあげられた。<空間>低・未利用地を活用した充填的整備によって、市街地空間の密度が向上する。低層建築による連続的な街並の実現、ヒューマンスケールによる歩行空間の充実した市街地空間が実現される。<機能>一階部分の床面積が増加するため、商業、サービスを提供できる床面積が25%多く供給でき、地区内の機能を複合化できる。<経済>賃料単価が38%、除去費用が36%と安価なため、新規居住や市街地更新が促進され易い。保留床が37%に縮小されるため、新規事業参入や市街地開発が促進され易い。木造で床単価が低いため、権利床が75%増加し、権利者が十分な資産を確保することができる。また、木造建築に関わる地元業者が開発に参入できるようになり、地域内の雇用の増加が見込まれる。<環境>炭素放出量が91%減少し、炭素固定量が54%増加するため、低炭素型都市実現へ貢献できる。<計画>減価償却期間、更新期聞が約半分になり、更新時の需要に合わせた床面積や機能の供給ができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地方都市の中心市街地における再生の目標像として、グリーンコンパクトシティ(木造コンパクトシティ)の空間象を提示することができた。さらに、木造コンパクトシティの可能性と課題を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
グリーンコンパクトシティ(木造コンパクトシティ)の課題として、以下の5つが導き出され、今年度の研究課題となる。(1)建築物が高密で充填的な配置であるために、隣地や周辺市街地を考慮した、適切な配置計画やオープンスペースの検討を行う。(2)現状より供給可能な住戸数が増加するが、中層RC型の43%に留まる。そのため、市街地の居住ニーズを把握し、木造集合住宅の供給による街なか居住の促進と、中心市街地の再生方策を検討する。(3)低層・木造建築が中心であるため、防火・津波シミュレーションを用いた、防災に対する検討を行う。(4)上記の課題に対応するため、部分的に中層建築を含めた中層RC型を、配置計画や住戸数の設定を含めて検討する。(5)木造公共建築を含めた、木造建築を中心とした中心市街地となる、木造コンパクトシティを提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は調査対象事例都市を帯広市、釧路市、恵庭市、岩見沢市を中心に進め、空間モデルの構築を先行させたため、北海道内をはじめとする、他の地方都市の中心市街地の都市空間調査費用の一部が、未使用額となった。次年度では、調査が残っている他都市を含めて、提案したグリーンコンパクトシティの空間モデルの再構築と、延焼シミュレーションを行う。その一環として、専用の3Dモデルシミュレーション装置と、延焼のコンピューターシミュレーションソフトを購入する必要がある。
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