研究課題/領域番号 |
23656361
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
森田 孝夫 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (90107350)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 避難所 / 豪雨 / 避難 / 奄美大島 / 佐用町 / 只見町 / 金山町 / 地域防災計画 |
研究概要 |
自助・共助・公助を組み込んだ大雨対応型の避難計画と避難所計画の開発研究を目的として,平成23年度は,地勢が異なる3被害地(兵庫県佐用町,鹿児島県奄美市,福島県南会津郡・大沼郡)を全戸を対象とするアンケート調査を行い,避難行動・避難生活の実態に関するデータを収集した。1.兵庫県佐用町(2009年8月豪雨);避難生活アンケート調査の集落単位の集計から,川の合流点にある集落,蛇行流域にある集落,二つの河川に挟まれた集落に大きな被害があり,指定避難所の立地と建物の安全性,避難所への経路の危険性を分析した。2.2.鹿児島県奄美市住用町地区(2010年10月奄美豪雨);自治体の災害対策の経緯説明を受けた後で,住民に避難生活アンケート調査を行った。全国的に共通する課題は,(1)通信インフラの被害で災害対策本部と被災地との双方向連絡の不通,(2)体の不自由な人や高齢者の避難,(3)局地的な集中豪雨の状況把握の難しさ,である。 自力で指定避難所まで避難できない高齢者が多くなっており,消防団の救助がなければ避難ができない実態を語っている。自力避難を前提にしない避難計画が求められている。奄美大島は,大部分が山で平野部分は東部の笠利町にしかなく,崖崩れで道路が通行止めになると集落が孤立する。海岸沿いの孤立集落への救援物資の搬送は海路と防災ヘリコプターが有効であった。住用地区では,特別養護老人ホームが土砂崩れに遭い,マイクロバスを使って住用地区で最も広い公共施設である奄美体験交流館に入所者が移動した。その結果,支援物資配給,給食,救急医療等が体験交流館に集約され,次に周辺避難所の避難者も移動した。このような避難所の地域環境のモデル図を作成した3.福島県南会津郡・大沼郡(2011年7月新潟・福島豪雨);鉄道の寸断,橋の流出があり,完全復旧の見通しがつかない。避難生活アンケート回答を回収中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,避難計画と避難所計画の再構築の手がかりとなる問題のある実態を解明するために,水害記録調査→水害現地調査→アンケート作成と調査の3段階の調査を研究計画通りに進めた。3調査対象地域である奄美大島,兵庫県佐用町,福島県南会津郡・大沼郡において,水害記録調査を行った結果,過去にも水害があり,災害が繰り返されていることがわかった。水害現地調査は,自治体の情報提供の協力もあり,おおまかな水害の状況を把握することができた。また郡部を調査対象としているために,いわゆる過疎集落も調査対象地区にしたために,10数戸の小集落であっても,集落集会所や神社社殿,安全な住家などを避難所にしていることが判明した。都市において地震を想定して,都市火災からの避難と広域避難場所や,小学校体育館を収容避難所とする地域防災計画と異なる郡部型の避難所計画を整理して改善することが急務である。このような被害状況の把握に立って,地域の全住民を対象とする避難生活アンケート調査を,郵送によって実施した。その結果,被災者が最も改善を求めたことは,飲食料や,トイレや,緊急医療ではなく,情報伝達手段のインフラストラクチャーの耐震性と,水害予測や避難誘導に関する迅速で正確な情報の提供であった。調査に対する住民の反応が大きく,熱心な訴えを綴った回答が返送され,「おおむね順調に進展している」と自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,23年度の郵送アンケートの回答をさらに詳しく集計しつつ,並行して,水害現地調査,計画コンセプトと方策,計画の再構築と提案の3段階の研究計画を遂行する。1.水害現地調査:アンケート結果に表れた諸傾向を現地で検証することである。前年度に未解決の課題となった情報インフラの耐震化と水害予測情報の作成,および郡部地域における避難所の段階構成と相互連携そして総合化について,考察をすすめなければならない。2.計画コンセプトと方策:避難経路・避難誘導,避難所の建物条件・避難生活支援・避難所の管理運営方式の設計について,諸課題の具体的な解決策は,公助・共助・自助の視点をもってデザインすることが求められる。3.計画の再構築と提案 最終年度末の研究推進計画であり,次のテーマに関する研究を推進する。(1)自治体の避難指示を補う自助・共助の避難行動指針と避難計画,(2)避難所の複数選択と段階構成配置,共助による避難所の開設と運営,(3)局地的集中豪雨にも耐える避難計画と避難所計画の再構築と提案
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次年度の研究費の使用計画 |
1.謝金;平成23年度から続く被災者の返送回答の集計と分析と,これまでに収集した水害記録等の資料の整理のために,研究補助者の謝金が必要である。2.旅費;水害現地調査を,鹿児島県,兵庫県,福島県において行うための国内旅費と,研究発表を東京都において行うための旅費が必要になる。3.その他;現在もなお郵送アンケート回答が返送されているので,受取人払いの郵送料がいる。また研究成果を,日本建築学会において研究発表するために,論文投稿料が必要である。
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