研究概要 |
2年の研究期間において、特別養護老人ホームおよび認知症高齢者グループホームを対象として全国アンケートを実施した。 まず、初年度の全国の特別養護老人ホーム359施設に対して3年間のべ約6万6千人分のデータを分析した結果からは、1)施設の種別、介護職員数、平均要介護度のいずれも骨折率に有意差は認められなかった。2)施設の構造はRC造が約8割を占め、床は約9割が転倒時の衝撃吸収性に劣る「直貼り」という実態が把握された。3)居室の床材により骨折率を比較したが有意差は認められなかった。また、施設の構造別の骨折率を比較したが有意差は認められなかった。その一方、「直貼り」の床は、そうでない床に比べて約50%骨折が増加することが統計的に確認された。 次年度は、全国の認知症高齢者グループホーム9,703施設から無作為に4,000箇所にアンケートを送付し、アンケートを実施し、950施設から有効回答(利用者約35000人)を得て、4)利用者の平均年齢、平均要介護度、常勤換算による介護職員の比率と転倒・転落骨折の関連を分析しましたが、今回の調査では統計的に有意な差は見られなかった、5)定員100人あたりの年間の骨折を比較した結果、転倒と転落による骨折の両方を併せた発生率(転倒・転落骨折率)が「RC造」の5.69%に対して「S造」で4.08%、「木造」で3.98%となり、「鉄骨造」「木造」では「RC造」よりも約3割、骨折が少ないこと(有意差1%水準)、6)「直貼」では転倒骨折率が5.58%と高いのに対し、「根太・二重床」では3.12%と低く、「根太・二重床」の施設では「直貼」の施設よりも約44%骨折率が減ることが統計的に確認された。 以上の結果から、高齢期の転倒や転落による骨折には床が影響しており、二重床や根太組など、衝撃吸収性のよい床が有効であること明らかになった。
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