研究課題/領域番号 |
23656366
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
竹田 直樹 兵庫県立大学, 緑環境景観マネジメント研究科, 准教授 (20316037)
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研究分担者 |
八木 健太郎 西日本工業大学, デザイン学部, 准教授 (30352222)
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キーワード | サブカルチャー / アニメ / マンガ / 地域活性 |
研究概要 |
国内の具体的な事例を取り上げて詳細な現地調査を実施した。主要な調査対象は、①神戸市の『鉄人28号』像、②境港市の『水木しげるロード』、③東京都品川区の『機動戦士ガンダム』像、④所沢市の『となりのトトロ』関連の緑地保全事業、⑤鳥取県北栄町の『コナンロード』、⑥東京都葛飾区の『両さん銅像』、⑦石巻市の『いしのまきマンガロード』、⑧東京都世田谷区の『サザエさん通り』、⑨敦賀市の『敦賀シンボルロード』である。これらについて、(1)プロジェクト関係者に対するヒアリング調査ならびに資料請求、(2)ビデオおよび目視による通行者の受容動態調査、(3)周辺の商業環境への影響調査を実施した。 また、サブカルチャーコンテンツが都市空間に与える影響全般について、その客観的(物理的)形態と受容形態の二つの視点から類型化を行い、以後の研究に必要なカテゴリーを形成した。これにより、そのカテゴリー毎に論文の執筆が可能な状況となった。 24年度に入り、アニメのキャラクターを銅像にして設置する事業や、アニメの舞台を巡るいわゆる「聖地巡礼」などに関する話題が、テレビなどマスコミを通じて頻繁に報道され、その経済的効果が著しく注目される状況になった。本研究は、こうした社会状況をふまえた場合、重要かつタイムリーなものであり、24年度の調査は、その基礎データの収集という観点から有意義なものであったといえる。 以上に関連し、環境芸術学会の大会において口頭発表(東海大学)を行った。また、査読論文を2報執筆し投稿した。(現在審査中)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した、研究目的は順調に達成されている。しかし、この分野は、予想を超えて社会的に急速に活性化しており、当初にはなかった新たな事例が数多く出現し、それらについても調査を行わなければならなくなってきている。アニメなどのサブカルチャーに着目した地域活性化事業は、すでに一大ブームに発展しつつあり、数多くの自治体や団体や企業が、新たな取り組みを計画している。事業の数が単純に増加するだけでなく、この数年で急速に普及したスマートホンを活用する事業、ホテルや自動車産業などの業態と連携する事業、自治体が地域活性を目的としてアニメ自体の制作に関与する事業など、当初は予想していなかった新たな事業形態の展開も多い。したがって、このような社会状況を踏まえると、当初、計画した研究の目的を達成するためには、当初予定していた調査だけでは不十分になりつつある。以上のような理由で、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書では、25年度は、韓国の『テコンV』とアメリカの『チャーリーブラウン』のまちづくりを調査する予定であった。しかし、前述したように、我が国における当該分野の展開は、当初の予想を超えて活性化している。我が国は世界的に見て特異にサブカルチャーが発展している国家であり、その重要性は高い。したがって、25年度は、海外調査を延期し、国内の調査に専念したいと考えている。少数の事例に絞った綿密な調査を実施した方が、論文の執筆には適しているが、25年度は、新たな事例の調査を優先する予定である。これらは、黎明期の事例として、将来的に意義深いものとなる可能性が高く、特にイベントなどテンポラリーな性質をもつ事業は、現場を取材する必要があり、調査の日時が限定される。一方で、24年度の調査の結果、追加調査が必要な事例もある。たとえば、石巻市の事例は、震災復興の精神的な基盤となっており、今後の展開を見る必要がある。境港市の事例は、累計入込み客数が2000万人を超え、年間の市の予算規模を上回る膨大な経済効果を生じており今後の動向を細かく観察する必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度の研究費は、国内の事例調査のために必要な旅費が主体となる。そのほか、鑑賞者や通行者の受容形態を記録するためにビデオを設置する場合の造作物を作るための材料費を使用する予定である。
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