研究課題/領域番号 |
23656367
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
田中 千歳 国士舘大学, 理工学部, 教授 (30346332)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 生理学的快適性 / 少子化 / 保育環境の質 / 建築学 / 実践研究 / スウェーデン |
研究概要 |
本研究は、幼保一元化を既に実施している福祉先進国スウェーデンの首都及び過疎地域の就学前保育施設を通して、園児と保育者の日常行動と環境との関係性について、生理学的快適性を指標にした行動調査に基づいて明らかにすると共に、我国の少子化の動向に立ち向か得る、快適・安全・安心な保育環境の質に関する環境整備条件について、建築計画学的なハード面と人・教育・社会文化的なソフト面のあり方を検討し導き出すことを目的とする。 本年度は、我国とスウェーデンでの就学前保育環境の現状把握と整理、及び保育士労働環境に関して生理学的指標を通し検討した。結果は、日本とスウェーデンでのハード面の環境は、敷地面積と周辺環境に顕著な差異があった。農村地方のAlvestaと長岡市では、園舎総面積は両者とも大差はないが、敷地面積は、Alvestaが長岡市の約1.4~2.1倍で約6000m^2、園庭ではAlvestaが長岡市の約2~2.6倍の約2400m^2であった。子ども一人当たりの専有面積は、Alvestaが70m^2で長岡市の10m^2の7倍である。また、Alvestaでは屋内に、木工や陶芸室、アトリエ等、園児が各々の意思で選択し決定する権利を支援する居室や空間が、適材適所に配置されており、保育士は必要最小限のケアを行っていた。さらにAlvestaでは、周囲に豊かな自然環境もあり、園児らがここでの遊びを通して、暮らしに必要な知恵や知識を習得していた。 一方、長岡市と世田谷区のヒアリング調査では、保育を増進するために最も重要なものは、共に保育施設全体や居室の広さであると回答を得た。また、屋内外両面の安全性を徹底するため、運営面での管理に重点を置いていた。加えて、生理学的事例調査では、保育士の睡眠時間や睡眠効率も良く疲労は認められなかったものの、常に活動しており、今後は、休憩空間に関しても合わせて総合的に検討することが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、効果的に研究を推進し成果を得ている。今後、園児各々が個別に活動する場面においても、調査機材と協力体制のさらなる強化を図り、万全の体制で飛躍的に研究が推進できるように計画している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、就学前保育環境の基礎的整備条件の抽出と整理、及びあり方の検討と提案について、以下の4課題を設定する。 設定課題(1) 前年度設定の4課題に対する各種調査結果の分析(経費:デスクトップパソコン、ノートパソコン、デジタルカメラ) 設定課題(2) 生理学的調査及び終了後の調査対象者へのフォローアップ調査、国内補足調査(経費:生理学的実験装置、ノートパソコン、デジタルカメラ、デジタルビデオ) 設定課題(3) 幼保一元化における園児と保育士の保育環境に関する整備条件の抽出と我国における就学前保育環境のあり方に関する提案(経費:デスクトップパソコン、ノートパソコン、デジタルカメラ) 設定課題(4) 最終報告書と研究成果論文化(経費:デスクトップパソコン、ノートパソコン、デジタルカメラ)
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用額は、今年度の研究をより効率的・効果的に推進することにより生じた未使用額であり、次年度の研究費用と合わせて、より飛躍的に展開する研究遂行に使用する予定である。 生理学的実験については、現有している実験装置を中心に実施すると共に、園児各々の行動データにも適切に対応できる広角デジタルビデオを用いて、十分な研究協力者も合わせて万全な研究体制の下、実施する計画である。また次年度は、環境整備条件抽出のため、特に建築学及び環境デザイン関係や福祉関係図書の充足を図り推進する計画である。また、データ整理や保管等においては市販の消耗品や物品を適宜組み合わせて支出する。実験調査では、国内外とも、研究調査打合せ及び生理学的実験調査と補強調査を行い、国内では3回、国外では2回の旅費を計上している。加えて、研究の成果発表及び動向調査のため国内学会発表と研究会やシンポジウム参加のため旅費を支出する。 実験調査では、スウェーデン国内各専門家への調整と案内及び建築資料提供、また研究補助として、学生による資料整理や採取データの電子化補助を計上している。合わせて、打合せ通信費及び論文製本化を計上している。
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