1. 目的:本研究は、幼保一元化を既に実施している福祉先進国スウェーデンの首都及び過疎地域の就学前保育施設を通して、園児と保育者の日常行動と環境との関係性について、生理学的快適性を指標にした行動調査に基づいて明らかにすると共に、我国の少子化の動向に立ち向か得る、快適・安全・安心な保育環境の質に関する環境整備条件について、建築計画学的なハード面と、人・教育・社会文化的なソフト面のあり方を検討し導き出すことを目的とする。本年度は、前年度研究成果を踏まえ、就学前保育環境の基礎的整備条件の抽出と整理、及びあり方の検討と提案を行なった。 2.結果:①保育園と幼稚園の業務の違いはあるものの、保育士が心身的負担を受ける空間に違いは見られなかった。②身体的負担が最も大きいのは保育室で、物の運搬による身体の痛みがあげられ、精神的負担では職員室が最も負担が大きく、「憂鬱」という回答が抜きん出ていた。③一方、活動量調査では、保育士と幼稚園教諭の睡眠時間・睡眠効率は比較的良好で、中途覚醒も一日平均2.4分、0.5回と少なく、顕著な疲労は見られなかった。④しかし、覚醒時の活動量が232.9c/mと高く、業務上、室内で身体活動を伴う煩雑な作業が終日続くため、活動量が高いことが確認された。⑤他方、スウェーデンでは、睡眠効率も良く、ヒアリング調査からも、園児の自主性を重んじる自由保育等でも、特に疲労は認められなかった。以上から、⑥業務中、適材適所で休憩を取ることができれば、心身への負担軽減につながり、また保育の質が向上するものと考える。⑦特に、保育室や職員室においての人間関係に精神的負担が大きく、適切な休息環境を確保できるシステムと十分な空間が求められている。⑧加えて、保育室や職員室のハード面の充実とともに保育士や教諭の隠れたニーズを掘り起こし、ソフト面に対して再度の認識と確認が必要である。
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