研究課題/領域番号 |
23656372
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研究機関 | 岐阜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
今田 太一郎 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40300579)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 相補的関係構築 |
研究概要 |
本研究は、郡上市八幡町におけるまちづくりの取り組みと郡上市で産する間伐材の活用を結びつけるという実践的な取り組みを通し、まちづくりにおいて隣接地域間が相互に補い合う関係の構築に向けて知見を得ようとするものである。平成23年度は、山林管理者、製材業者にヒアリングを行い、林業がおかれた状況、郡上市における間伐材の利用状況、及び間伐材の利用が広がらない要因について把握した上で、まちづくり関係者、行政関係者と協議を重ね、地域における間伐材プロダクト生産―活用の仕組みづくりについて検討を行った。 調査の結果、把握した郡上市における間伐材に関わる状況は以下の通りである。 間伐材は大量に生じているが、間伐材の利用が進まない理由としては山から搬出するためのコスト、及び乾燥、製材のプロセスにかかるコストによって、製品化しても利益が生まれないことが要因としてある。ただし、間伐材自体の価格は大きなものではない。また、乾燥・製材に関しても、間伐材は汎用材と比べて品質の差異が著しく、乾燥のコントロール、製材について一定のコストが必要となる。 こうした間伐材活用に関する諸状況の把握は、山とまちを繋ぐ間伐材活用システムのモデルを検討する為の知見として重要であった。具体的には、デザイナーや加工者、販売者等が直接間伐材の搬出、乾燥、製材に直接、関わる等の方法で間伐材プロダクトの生産過程全体を効率化する事によってある程度生産コストを下げる事が重要であると考えられる。 次にまちづくり関係者、行政関係者との協議を通し、山とまちを繋ぐ間伐材デザインー活用システムのプロトタイプ形成について検討を行った。具体的には郡上市八幡町で行われているまちづくり活動である「郡上八幡クラフト展」において活用される屋台の開発について、加工を担う地域のクラフト職人、販売・運営を担当するNPO法人とともに行うことにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度の研究においては、研究対象である郡上市の山林、特に間伐材の活用に関する現状を把握し、間伐材活用の実験的プロジェクトについて、関係者、特に山林管理者、まちづくり関係者、行政関係者の一定の理解と協力を得られる状況の構築には至ったものの、研究計画で予定した平成22年度中の間伐材を活用したプロダクトのプロトタイプ製作は実現していない為、研究の達成度はやや遅れていると判断した。しかし、山林管理者、行政関係者、クラフト職人、まちづくり関係者の協力を得て、間伐材活用の仕組み作りに向けて実際に取り組みを動かす為の環境の整備は整ったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は平成23年度の成果をもとに以下の研究の展開を計画している。 郡上市では、森林管理者とNPO法人が共働して、郡上市の間伐材を割り箸として製品化し、販売する事業である<間伐材割り箸プロジェクト>が既に活動している。また、郡上市八幡町ではモノづくりに関わる若手を街に結びつけることを意図したまちづくりの取り組みとして手作りのクラフト販売を中心としたマーケットである<郡上八幡クラフト展>(以下、クラフト展)が1月を除く奇数月に行われている。両者を結びつけることで、山とまちを繋いでプロダクトを生産、展示、販売する仕組みのプロトタイプを構築する。 具体的にはクラフト展において活用される屋台を間伐材を用いてデザインし、活用する。そのメリットは、クラフト展側には、木材によるオリジナリティのある空間展開によってイベントのイメージを高められることにある。研究の立場からは、郡上市民、観光客に対し、プロダクトの魅力を伝え、間伐材を活用したプロダクトに対する意識を高めることが期待できる。 割り箸プロジェクトを本研究に結びつける事は割り箸プロジェクトにとっては間伐材活用の幅が広がる、展示販売のルートが広がる等の利点があり、本研究においては間伐材提供・販売の主体として位置づけられる。更には木材製材、保管、加工のノウハウをプロジェクトに組み込む事を目的として八幡町の木工職人が集積した木工団地との連携を考えている。 間伐材デザイン及び全体のコーディネートに関しては、プロトタイプの段階では研究者がその役割を担うが、間伐材の利用を望むデザイナーや職人等が関与できるオープンなシステムに展開させていきたいと考えている。 本研究では、サイクルの全てを最初から用意するのではなく、以上の組織と連携しながら、必要性が生じた要素、糸で結びつけるように関係する人々をつなげていくことで、徐々にサイクルを形成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、今年度、間伐材を用いたプロダクト(屋台)のデザイン・製作を今年度行えなかった分も含めて行い、予定であり、主にその製作費として1棟20万円×5棟程度、製作の為の機材等に35万円程度を計画している。また、製作の為の打ち合わせにかかる会場費、交通費として10万円程度、製作協力、間伐材プロダクト活用実験に伴うアンケート調査等に係る費用として20万円程度を予定している。
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