昨年度は、平成23、24年度の取組の成果を踏まえ、以下の3点から研究実践を進めた。 1)モノづくりの仕組みの確立:郡上市を中心に活動するデザイナー、木工職人、郡上ものづくりプロジェクト事務局などとともに「森―まちデザインネットワーク郡上」(以下、森―まち)を結成した。また、プロジェクトの各段階の状況に応じ、林業従事者、職人、民俗学者、企業など、これまでに蓄積したネットワークを含め、多様な主体を活用した。 2)モデルプロジェクトとしてのプロダクトの開発:森―まちにおけるプロダクトに関する議論を通して中心市街地において地域住民の地元産の木材に対する意識を高めるために、地域における新たな生活文化の創造と結びついたデザインの視点が生まれた。この観点に基づき、かつてはどこの家にもあった神棚を現代的に再解釈したココロダナのデザインを行った。 3)まちづくりと連携したプロダクトの展開手法の開発:平成24年度に連携したまちづくり協議会、郡上市主導の愛宕公園整備計画と再度連携し、地域の伝統行事「山の講」を原型とするイベント「愛宕の森美術館」を実施し、を実施。更に月に一度、中心市街地に位置する店舗などにココロダナを設置し、設置場所に関連する様々なモノを祀る活動を開始した。また、これらの試みをココロダナにまつわる地域の新たな物語(生活文化)として広く発信するためにホームページを作成した。 本研究で、これまでに形成してきたデザイン開発のコアチームとそれを取り巻く多様な主体による緩やかなネットワークという形態は、モノづくり、まちづくりを通して、隣接する地域間の相補的な関係を構築する一つの原型となりうると考えている。また、専門技能のノウハウや地域文化についての知見を蓄えた様々な主体と連動することによって、単なるモノづくりに留まらず、地域の生活文化と結びついた新たなモノづくりの可能性が示唆された。
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