研究課題/領域番号 |
23656373
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藤川 昌樹 筑波大学, システム情報系, 教授 (90228974)
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キーワード | 江戸型町家 / 農家同源型町家 / 簡易構造の雑舎 / 常陸太田 / 東北地方太平洋沖地震 |
研究概要 |
本研究の目的は、北関東の伝統的町並みの二つの特色(α多様なタイプの町家から構成されている、β現況では伝統的町家の残存率は高くない)を説明する以下の仮説を検証することにある。すなわち、i)北関東の町並みはおよそ戦前期頃まで、A江戸型家、B農家同源型町家、C簡易構造の雑舎の三種の建築により構成されており、Aは定型化が進んでいたが、B・Cには様々なヴァリエーションがあって定型を獲得する前に戦後を迎えた。ii)町並みの中に、Cが少なからぬ比率で存在し、これらの建て替えが戦後急速に進んだ。以上の事情があったため、上記α・βの町並みの特色が生じたのではないかとの仮説である。本研究はこの仮説を検証するため、遺構の現存確認・実測調査をもととした分析作業を行うものである。 今年度は、(1)桜川市真壁町における「家屋台帳」登載建物と現存遺構の比較調査、(2)2012年5月6日に竜巻被害にあったつくば市北条の町並みの被災状況調査、(3)徳島県美馬市脇町・高知県室戸市吉良川町・岡山県倉敷市における比較調査を実施した。 このうち(1)では、明治35年(1902)に作成された家屋台帳に登載された敷地・建物の比定を現地で試み、異同状況を確認した。この結果、杉皮葺き・板葺きの建物が瓦葺きへと変更されるケース以外にも、瓦葺きから瓦葺きへ建て替えられるケース、様々な理由により取り壊されて空地になるケースが存在することが判明した。また、(2)では、目視を中心とした被災状況の確認・図面作成により、2011年の東日本大震災時の被害とは異なり、堅牢な土蔵造り建造物の被害が軽微であったことが判明した。(3)では西日本にも吉良川町のように、近代に入ってから後世に残るような本格的な町家建築の多くが建設されたケースもあるが、全体的に定型化は比較的早い段階で進んでいたと推定されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、当初の調査計画通り、桜川市真壁町における「家屋台帳」登載建物と現存遺構の比較調査を行ったほか、予定外であったが遭遇した竜巻被害の調査を行うことができた。昨年度は震災被害状況を確認することもできているので、災害という側面からも検討が深まっているため、上のような判断とした。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きC簡易構造雑舎の実測調査を実施し、どのようなタイプのものが存在したのかについての知見を充実させていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の研究は全体としておおむね順調に進展したものの、群馬・栃木両県の町並み調査については十分に実施することができなかった。 そこで次年度は、繰越額と今年度予算と合わせて、検討を両県にも広げるとともに、桜川市真壁町、常陸太田市でも実測調査を実施したい。このため、旅費や調査補助員の人件費が多くを占めることになると思われる。
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