本研究の目的は、都市の「歴史性」や「場所性」といった抽象的な概念を「都市組織(tissu urbain / urban fabric )」の変遷に着目して具体的に明らかにすることである。その際、対象として、都市開発の痕跡が幾重にも織り重なった旧市街パリ市第I・IIを設定した。2年間(2011、2012年度)の研究成果に基づき、3年目(研究最終年度)となる2013年度は、「重層的に構築されてきた都市組織の都市基盤インフラとしての近現代都市再開発への関与」に関してフィールドワークを実施し、次の3つの具体的場所における都市組織の変遷と近現代都市再開発計画との関係を分析した: [1] サン=ドニ門周辺再開発コンクール(1943実施) [2]モントルグイユ歩行者専用区域の整備計画(1989-94以降現在に至る) [3]レ・アール地区での2度の再開発計画(1963年旧市場解体以降現在に至る) 特に[3]のレ・アール地区に関しては、1970年代においてパリ最大の再開発事業であった場所が再び新たな整備の必要性に直面しており、近代主義(モダニズム)都市建築の現代再開発という新たな局面を都市組織的の変遷から分析した。それ以外の2地域は、近代再開発を通じて結果的に保存さた都市組織が基盤となっている場所であり、既存の都市組織を維持しつつ現代のニーズに対して如何に適応していくかについて、[1]では都市境界域の景観整備、[2]では都市交通の制御を通じた約20haに及ぶ歩行者専用区域化による都市アメニティー機能の向上、がそれぞれ把握された。
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