研究課題/領域番号 |
23656380
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
米永 一郎 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20134041)
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研究分担者 |
大野 裕 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (80243129)
徳本 有紀 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20546866)
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キーワード | 物性制御 / 半導体 / 磁気特性 / 転位 / 金属不純物 |
研究概要 |
本研究は、半導体結晶での欠陥-不純物反応に関する知識を基盤として、シリコン結晶中に高密度に導入された転位欠陥に沿って強磁性不純物のナノ構造複合体を形成し、磁気機能性を有する新しいデバイスを構築することを目的とする。 本年度は、強磁性不純物の拡散法による転位でのナノ構造体の形成とバルク結晶成長法による強磁性不純物の高濃度添加法を昨年度に引き続き試行した。(1) 拡散法による転位でのCuナノ複合体の形成:転位の組織構造でのナノ複合体の形成について、基礎的な知識として、シリコン試料に銅不純物を900-730Cにおいて100時間、真空中で熱処理して形成される銅析出物に関する結晶学的特性が明確化された。(2) 拡散法による転位でのMn構造体の形成:109cm-2の高密度転位に沿って強磁性Mn不純物を拡散法させたシリコン結晶の表面層において、無転位試料では見られないMn化合物の形成を形成した。転位に沿ったMnの優先的拡散の証拠を見出した。(3) 磁性不純物添加シリコン結晶の育成:チョクラルスキー法により、各種不純物を高濃度に固溶する育成を行ったが、単独の不純物添加ではそのMn濃度はSIMS分析の結果想定を下回った。そこで、その中でMn不純物とさらに別種不純物の同時添加法を試みた。育成された結晶の磁化特性について、現在検討中である。 このように、変形試料や磁性不純物導入のための基礎的条件の抽出とその把握はほぼできたが、Mn不純物による強磁性特性を見出すにまだ至らず、より高濃度の不純物添加が必要であるため、相当遅れていると判断せざるを得ない。延長となった平成25年度においては、拡散法、結晶成長法、さらにより高濃度が期待されるイオン注入法での研究を行い、本研究を完遂する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
24年度において、磁性金属不純物を拡散法を用いて高密度に転位を含むシリコン結晶に導入させて磁気特性を評価・探索し、その成果を発表する予定であったが、SIMS分析の結果不純物導入量が想定を下回り、磁性金属不純物による強磁性特性を見出すにまだ至らなかった。ただ、Mn不純物による転位に沿ったナノ構造体の形成がようやく見出された。いずれにせよ、現状では計画に対し遅れていると判断せざるを得ない。より高濃度の不純物添加が必要であるため、計画を延長し、より高濃度が期待されるイオン注入法を利用することとした。このため、磁気特性の評価と探索、および発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充当することとしたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成23, 24年度の成果を基盤として (1) 24年度において可能性が見出されたように、高密度の転位を含有するシリコン結晶について、転位に沿った優先拡散により高濃度のMn、Fe、Ni不純物を導入する。またバルク結晶成長法でMnとSb不純物を同時添加し、Mnをより高濃度化したシリコン結晶を育成する。(2) 上述の前半の方法で、転位と不純物がなすナノ組織構造を形成し、その磁気的特性の評価を進める。さらに不純物濃度や転位、ナノ構造体の分布間隔等の条件を最適化することでより高精度化し、再現性のある優れた組織構造を実現する。(3) より高濃度の磁性金属不純物の導入が期待されるイオン注入法を実施し、表面転位領域での磁性不純物構造体の形成を行う。(4) それらの物理機構について、基礎的解明を進める。これらにより、新しい機能性デバイスのモデルを確立して、企業との連携を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の計画実施中、磁性金属不純物の有転位シリコン結晶への拡散法による導入量が想定を下回ったため、成果発表等に予定していた経費の執行を中止し、25年度にイオン注入法を利用して、より高濃度の不純物を有転位シリコン結晶へ導入し、その磁気特性の評価と探索を行い、さらに成果発表するという研究期間延長を希望し、認めていただいた。 25年度においては、上記の理由により24年度に生じた未使用額を、上記項目(3)「より高濃度の磁性金属不純物の導入が期待されるイオン注入法を実施し、表面転位領域での磁性不純物構造体の形成」を実施するための経費に充当する。
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