研究課題
本研究は、半導体結晶での欠陥-不純物反応に関する知識を基盤として、シリコン結晶中に高密度に導入された転位欠陥に沿って強磁性不純物のナノ構造複合体を形成し、磁気機能性を有する新しいデバイスを構築することを目的とする。上記目的に対して、(1) バルク結晶成長法による高濃度の強磁性不純物の導入と(2) 強磁性不純物の拡散法による転位でのナノ構造体の形成を試みた。(1) 磁性不純物添加シリコン結晶の育成:チョクラルスキー法により、各種不純物を高濃度に固溶するシリコン結晶の育成を行い、濃度4 × 1016 cm-3のMn不純物を固溶する1インチ径のバルク結晶が育成した。ただ、その結晶の電気的特性は10Kから室温の範囲でHall係数法によって高純度結晶と同じであり、また磁化特性もSQUIDによる磁化測定では、自由電子による常磁性に留まり、Mnに起因する強磁性特性を見出すには至らなかった。しかし、同種の育成実験で、Cu、Pb、Sn等の特異な不純物を固溶する結晶の育成に成功し、それら不純物の結晶欠陥である粒界への集積現象を解明するに至った。(2)拡散法による磁性不純物の導入と複合体の形成:109cm-2の高密度転位を導入したシリコン結晶の表面にCu、Mn不純物を蒸着し、それらから結晶内部へ拡散法により侵入させ、その2-5μmの表層領域においてそれら不純物の複合体を形成させた。特に、MnSi1.75化合物の形成が確認された。また、表面層にSb不純物を同時に蒸着させるとその形成が促進されることが見出された。それら試料の磁化特性について、現在検討を進めている。このように、本研究の目的とした欠陥構造を利用した磁気デバイスの開発には至らなかったが、基礎的学理として、磁性不純物の転位に沿う拡散挙動、複合体形成、それらに対する異種不純物の同時添加の影響、粒界・転位との不純物反応・集積現象の解明を進めることが可能となった。今後、これらの結果を論文として発表する。
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