直線型プラズマ模擬装置NAGDISにおいて,タングステンへのヘリウムプラズマ照射実験行いナノ構造を形成させ,その後形成されたナノ構造体の高温時の変化を調べた。また,温度とヘリウムフラックスを変化させ,形成に与えるフラックス依存性を明らかにした。 ヘリウムイオンを照射しながら,試料のバイアスをon/offさせることにより,温度とフラックスをコントロールし,同時に表面構造変化の指標として表面の光学反射率を計測した。温度が1300-1600 Kで,ヘリウムフラックスが平方mあたり1e21から1e22の間において,ヘリウムを照射しているにも関わらず光学反射率が回復してくる領域があることが明らかになった。つまり,ヘリウム照射時においても,ナノ構造の形成と,ナノ構造が修復していく領域があることが分かり,フラックスがある閾値以下になると成長しなくなる条件があることが明らかになった。 23年度の実験結果から,1400-1500 K以上になるとアニーリングが起こり,ナノ構造の形成が抑制されることが分かっているが,その結果に引き続き,耐熱性に関しては,1300 K程度まではよいものの,それ以上に温度に上げた場合には,十分な耐熱性が得られない可能性もあることが示唆された。タングステンのナノ構造体をエミッターとして利用する際には,1300 K以下の帝王で使用する必要があると考えられる。 また,タングステンではないが,ナノコーンの形成がヘリウムプラズマ照射によっておこることが明らかになり,その条件を明らかにした。ナノコーンにおいては,より耐熱性を持つ可能性があるため,今後タングステンなどの高融点材料においても,ナノコーンが形成される条件を特定することが重要であると考えられる。
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