ダイアモンドアンビルセル(DAC)という超高圧発生装置とレーザーを組み合わせたシステムによって得られる圧力数GPa以上及び温度2000K程度の超高圧超高温超臨界流体高活性強酸化剤を使用して,新しい貴ガス化合物の創製を目指した.そして,貴ガス化合物の結合状態や圧縮特性を高圧下でのその場測定によって明らかにし,最終的には超高圧下での金属化の可能性を探ることを目的とした.重要課題は3つあり,すべて装置開発がキーとなる内容である.本研究では,常圧で気体として存在するガス状物質をDAC内に高密度に封入する方法として,常圧下で気体を冷却し液化して高密度な物質とし,これをDAC内に充填する方法を選択した.装置開発の1つ目は充填するためのシステムの開発であり,23年度までにほぼ完成させ実際に充填に成功した.2つ目はこのシステムに最適なDACの開発である.上記のように,ガス充填の際に冷却過程が入るため,DACの冷却に伴う収縮と変形それによる圧力変化,さらにはダイアモンドアンビルを固定しているグルーの劣化等の問題が生じるため,これらを克服したDACの改良を進め開発・確立した.3つ目は化合物を高圧下で評価するためのその場観察システムの開発である.まず,構造解析を行うための高圧その場X線回折測定システムを本研究に最適なシステムとするために改良した.さらに,結合状態を明らかにするための高圧その場ラマン分光測定システムを本研究に最適なシステムとして再構築した.上記装置・システムの開発・改良・確立が当初予想していた以上に困難であったこともあり,研究終了直前までの時間を要した.装置開発と同時並行で進めた新物質合成では新しい希ガス化合物の創製には至らなかったが,創製に必要なハード的な環境は確立できたため,今後精力的に合成実験を進めることによって新しい希ガス化合物が創製されることは十分に期待できると考える.
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