研究課題/領域番号 |
23656387
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松村 晶 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60150520)
|
キーワード | 超高圧電子顕微鏡 / 光励起過程 / その場観察 / 金ナノロッド |
研究概要 |
本研究では、パルスレーザー光照射機能を有する超高圧電子顕微鏡(HVEM)を用いて、レーザー光照射下での金属ナノ粒子の状態とその変化をその場観察を可能にする装置改良と実験技術の開発を行い、その成果を基に、可視光域ならびに近赤外域で集光素子として期待されている金ナノロッドのレーザー光(波長λ=1064, 532 nm)照射下の動的挙動のその場観察を進め、その励起過程と挙動を支配する因子を明らかにすることを目的としている。昨年度に装置の整備が進んだので、本年度はそれを用いてパルスレーザー光照射に伴う金ナノロッドの変形過程の「その場」観察実験を中心に研究を進めた。長軸 50 nm、短軸 10 nm の金ナノロッドを懸濁した液を、Arプラズマ中で親水化処理したQuantifoil 炭素支持膜に滴下し、真空乾燥したものを試料とした。 照射線束密度 4.1×10E21 photons/m2/pulse の条件では、パルスレーザー光を1パルス照射すると金ナノロッド は球状粒子へと変形した。2.5×10E21 photons/m2/pulse の条件では、数 pulse の照射により金ナノロッドのアスペクト比が減少し、球形へと変形する過程が観察された。また1.7×10E21 photons/m2/pulseでは一部の金ナノロッドは球形へと変形したが、ほとんどの金ナノロッドは照射初期にアスペクト比が減少するものの、その後パルスレーザー光の照射量を増加しても、変化は進行せずにアスペクト比は一定値に漸近した。また、凝集している粒子は孤立している粒子に比べて著しく変形し、合体する様子が観察された。また、波長532 nm のパルスレーザー光を照射した場合には、1064 nmレーザー光と比較して変形が遅く進む事が明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに超高圧電子顕微鏡の試料室にパルスレーザー光を導入する事を可能にし、また試料室での光強度の測定も可能になっており、レーザー光照射による個々の金ナノロッドの動的挙動をその場観察する事ができている。
|
今後の研究の推進方策 |
超高圧電子顕微鏡の特徴を生かすために、原子レベルの高分解能観察に注力してく予定である。ナノロッドの外形変化に関わる内部の原子配列の挙動にsついての知見を得る。また、光に対するナノロッドの方位依存性、レーザー光の偏光依存性、基板の温度依存性についても検討を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|