研究課題/領域番号 |
23656393
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
小玉 展宏 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90282152)
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キーワード | フォトニック結晶 |
研究概要 |
本年度も、ワイドバンドギャップ材料であるホウ酸塩ガラスと結晶の真空紫外分光特性とフェムト秒レーザー照射によるナノホールおよび2次元アレイ構造の作製と構造評価、加えて電子線(EB)リソグラフィーによるナノホールアレイの作製と光閉じ込めシミュレーションを行った。 [1]真空紫外分光特性:Li2O・2B2O3(LTB)ホウ酸塩ガラスおよび同じ組成のLi2B4O7(LTB)ホウ酸塩結晶の真空紫外励起による分光スペクトル特性から、束縛励起子あるいは色中心とみられる発光中心を見出した。 [2]フェムト秒レーザーアブレーションによるナノホールアレイの作成とモルフォロジー 表面に集光したアブレーションによって,LTBガラスではビームプロファイルを反映したほぼ円形(楕円状)のホールが形成,LTB結晶ではプロファイルとは異なり、結晶の構造 (正方晶) を反映した四角形状のホールが形成されることを見出し、ガラスと結晶のホールのモルフォロジーの違いを明らかにした。。加工断面はLTB結晶では{hh0} 型面となっている。LTBガラスおよびLTB結晶ともに,ホールサイズはフルーエンスの減少とともに小さくなる閾値加工であることが分かった。ホール直径のフルーエンスに依存し、内部のホールサイズは,ビームスポット径(約2μm)および波長以下のナノホール(LTBガラス:直径~500nm, LTB結晶:一辺165~200nm)が形成されることを見出した。 [3]EB描画によるナノホールアレイの作製とフォトニックバンドギャップ(PBG)のシミュレーション LTBガラスのEB描画では3角格子で比較的大きさの揃ったナノホール(平均直径220nm)が形成されたが、断面は円柱状とはならない。描画された2次元ホールアレイを基にシミュレーションした結果,波長990~1050nmの近赤外用域で完全PBGが存在する可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元フォトニック結晶を目指し,同じ組成をもつLi2O・2B2O3(LTB)ガラスとLi2B4O7(LTB)結晶表面にフェムト秒レーザーアブレーションによりホールを作製した。ガラスではほぼ円形のホールが,結晶では四角形状のホールが形成されること、形成されるナノホールの形態の材料構造の違いを見出し、この結果は新たなフォトニック結晶の設計に役立つ可能性がある。また、ホールの大きさはフルーエンスに依存し集光スポット径より小さいナノホールが形成され,閾値加工であると分かった。LTBガラスでEB描画されたホールアレイに基づいたシミュレーションで完全フォトニックバンドギャップ(PBG)の存在が予測された。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度として、完全全フォトニックバンド(PBG)を有するナノホールアレイ構造作成に向け下記の実験を実施する。 [1]フェムト秒レーザーアブレーションによる2次元ナノホールアレイの作製:完全PBGを有する2次元欠陥構造フォトニック結晶の作製及び光伝搬モードを解析する。 [2]イオンエッチングによる2次元ナノホールアレイの作製:集束イオンビーム(FIB)微細加工により、周期性の良い3角格子ナノホールアレイを作製し、アブレーションで作製したナノホールアレイの構造を比較する。 [3]上記2つの作製法により形成したホールアレイの構造結果に基づき、束縛励起子(BEあるいは)STE)の準位と局在モードが重なる周期をもつフォトニック結晶を作製する。 [4]束縛励起子と希土類イオンの分光特性とエネルギー移動のダイナミクスを調べ、STEから希土類イオンへのエネルギー移動による量子カッティングを探索し、新奇な2次元フォトニック結晶の可能性に対する基礎的データを得る
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次年度の研究費の使用計画 |
光学測定用部品の購入 ガラスおよび結晶原料の購入 サンプルの加工・研摩 国内旅費(レーザーアブレーションおよびイオンビーム微細加工とSEM測定)
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