本研究は、PETシートを基材の上にゼラチンとリン酸カルシウムをコートした材料を、骨誘導再生用のメンブレンとして応用することを念頭に置き、本材料の組織再生機能を細胞培養実験と動物埋入試験を通じて評価することを目的としている。 細胞培養試験に用いた細胞は、ヒト歯根膜細胞である。試験の結果、本研究の材料はヒト歯根膜細胞の接着・増殖および伸展に関して好適な環境を提供しうるものであることが明らかになった。このことから、本材料は骨誘導再生のみならず、組織誘導再生にも応用しうるものであることが示唆された。 動物実験は、6歳齢の雌ビーグル犬を用いて実施した。4匹の実験動物について下顎の左右第1~第4前臼歯を抜去し、左側の歯槽骨には本研究の材料をメンブレンとして用い、右側は何も埋植せずに縫合してコントロールとした。14日および30日後に実験部を摘出して組織観察を行ったところ、本研究の材料をメンブレンに用いた側では、平均約6倍の骨形成が見られた。このことから、本研究の材料は骨誘導再生用メンブレンとして非常に有望と思われた。 研究を通じて得られた知見を踏まえ、本材料の改善点も明らかになった。 本材料が組織再生を促す理由は、最外層のリン酸カルシウム(リン酸八カルシウムと低結晶性水酸アパタイト)の溶解性が高いためと思われるが、血液などで濡れると、リン酸カルシウム層が剥がれやすくなった。この点を改善すべく、新たな作製法の確立を試みた。現時点では作製条件の最適化には至っていないが、リン酸カルシウム層の剥離の程度を大幅に低減できることがわかった。また、ヒト歯根膜細胞は、平滑な表面ほど伸展することから、新しい製法は有利に働くと思われた。
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