研究概要 |
本申請研究によりCIS系化合物の粒界原子構造を明らかにし,界面における欠陥形成挙動を定量化する.さらに得られた原子構造と欠陥構造からバンド構造を明らかにし,粒界が物性に及ぼす影響をしらべる.以上の研究から機能との相関性を明らかにすることを目指す. 平成25年度においてはCIS粒界を作成し,その粒界の走査透過型電子顕微鏡(STEM)像観察と,第一原理バンド計算により定量化することに成功した.具体的には,CIS双晶には幾つかの準安定構造が存在し,それらの粒界エネルギーは一般的な機能材料の粒界エネルギーと比較しても非常に小さいことが明らかとなった. また,同粒界構造のバンドギャップとベンディングを第一原理ハイブリッド汎関数法により調べた.その結果,バンドギャップやベンディングの変化が,粒界Seの配位環境と相関性があることが明らかとなった(APL2014).さらに,同粒界における点欠陥形成エネルギーを系統的に調べた結果,プロセス環境であるSeリッチ雰囲気下においては粒界への空孔偏析がほとんど起こらないという結果を得た.(J. Ceram. Soc. Jpn. 2014) 以上の結果から,CISに多数存在するΣ3粒界においては点欠陥の偏析は起きず,Σ3粒界におけるバンドギャップ変化やベンディングは粒界の異常配位形成に伴うものであることが明らかとなった. さらに,平成25年度においては表面保護層に使われるアモルファス物質についてSTEM観察を行い,アモルファス中の単一原子観察に成功した(ACS Nano2013).また発電された電力をためる蓄電材料についても,第一原理計算,XANESなどにより構造解析を行い,ドーパントや欠陥の構造を明らかにすることに成功している.(APL 2013, JAP2013, Sci. Rep. 2013). 以上,本申請研究においては太陽電池光吸収層や表面電極,保護層,蓄電材料に関して総合的な研究を行い,材料開発上重要な知見を得ることに成功した.
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