研究課題/領域番号 |
23656397
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
脇谷 尚樹 静岡大学, 工学部, 教授 (40251623)
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研究分担者 |
鈴木 久男 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (70154573)
坂元 尚紀 静岡大学, 工学部, 助教 (80451996)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ポリスチレン / テンプレート / PLD / マルチフェロイック / フォトニック結晶 |
研究概要 |
最近、単層のコロイド結晶(MCC)を用いて2次元周期構造を作製する方法が注目されている。これはポリスチレン(PS)などの単分散微粒子を基板上に単層で最密充填構造させたテンプレートを用いる方法である。我々はこの方法で半球の球殻が最密充填構造を維持しながら結晶化したCoFe2O4薄膜、すなわち、【2次元磁性フォトニック結晶】の基本構造の作製に成功している。本研究の目的は、(1)磁気光学効果(MO効果)と電気光学効果(EO効果)の共存する材料または複合材料の探索、(2)PS-MCCをテンプレートに用いた磁気電気光(MOE)フォトニック結晶の作製、および、(3)MOEフォトニック結晶に磁界または電界を印加した際の光学特性の変調の測定の3個である。平成23年度は(1)磁気光学効果(MO効果)と電気光学効果(EO効果)の共存する材料または複合材料の検討と(2)PS-MCCをテンプレートに用いた磁気電気光(MOE)フォトニック結晶の作製を行った。(1)については強誘電体(圧電体)として主にBaTiO3とPZTについて、磁性体としてスピネル構造を有するCoFe2O4とNiFe2O4、およびペロブスカイト構造を有する(La,Sr)MnO3について検討を行った。(2)についてはPS-MCCテンプレート上に下部電極としてLaNiO3(LNO)薄膜を室温のPLD法で作製後、アニールによりPSを除去して2次元周期構造を有するLNO自立薄膜を下部電極層として作製し、この上にPLD法によりPZT薄膜を作製し、さらにその上に上部電極としてLNO薄膜を作製した。このとき、基板を傾ける方法により、二次元に周期的に配列している球殻状のPZT薄膜の表面の一部にのみ電極を作製することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的とする強誘電性-強磁性-および光の相互作用を達成するためには電極として磁性体を用いる必要があるが、磁性体であるLSMO上ではPZTは結晶化しなかった。この原因として結晶化温度の不足などの実験上のパラメータが最適化されていないことが挙げられる。そこで、23年度はPZTの結晶化が容易なLNO電極を用いることにより、2次元周期構造を有するPZT自立薄膜を作製したわけであるが、目的とする構造は電極のLNOをLSMOに代えるだけで達成される。すなわち、目的とする基本構造は今年度にすでに完成したと考えられる。このため、研究の目的の達成度として「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、下部電極としてLSMOを用いた構造の作製を目指し、成膜条件の最適化を行っていく。しかし、もしLSMO上ではPZTの結晶化がどうしても難しい場合にはLSMO上にLNOを積層させたLNO/LSMO複合電極としてこの上にPZT薄膜を作製することを行う。このようにして二次元周期構造を有する強磁性体と強誘電体の自立型の積層薄膜を作製し、本研究の最終目的である電気-磁気-光の相互作用を検討する。このように作製したMOEフォトニック結晶の微構造観察は材料および構造の最適化を検討する上で必須であるが、これは学内の共同利用機器である集束イオンビーム(FIB)装置とイオンスライサーを用いて試料の注目する部分の断面試料を作製し、高分解能の透過型電子顕微鏡(HRTEM)観察によって実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費は、薄膜の作製に必要な消耗品代と研究打ち合わせならびに研究成果発表のため旅費として使用する。消耗品代の内訳としては、PLD法で用いるエキシマレーザーの発振に用いるボンベガス(フッ素、ネオン、クリプトン)や薄膜の熱処理に用いるボンベガス(酸素、窒素、アルゴンなど)やターゲット作製に用いる各種の試薬および電気的・磁気的および光学的測定を行うために必要な金属部品や回路部品等である。旅費の内訳としては、研究方法や成果に関してディスカッションを行っている東京工業大学の材料工学専攻の篠崎和夫教授との研究打ち合わせや9月に名古屋大学で開催される日本セラミックス協会の秋季シンポジウムでの発表などである。
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