研究課題/領域番号 |
23656399
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
福田 功一郎 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90189944)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 結晶配向セラミックス / 酸化物イオン伝導 / 反応拡散 / 固体酸化物型燃料電池 |
研究概要 |
セラミックスは結晶粒子の高配向化によってその機能が著しく向上する場合がある。研究代表者はLa2SiO5とLa2Si2O7から成る拡散対を空気中で加熱する簡便な方法で、La9.33(SiO4)6O2(LSO)のc軸が接合界面に垂直に高配向(ロットゲーリング法による配向度は93%)した結晶配向セラミックスの作製に成功した。アパタイト型ケイ酸ランタン(LSO)の結晶構造内には酸化物イオン伝導経路がc軸に沿って存在するので、イオン伝導度の飛躍的な向上が期待できる。今年度は(1)アパタイトの生成機構と(2)LSO結晶配向セラミックスの酸化物イオン伝導度を複素インピーダンス法で決定した。 アパタイトはLa2SiO5とLa2Si2O7から成る拡散対の接合界面で生成した。その反応式は(10+6x)La2SiO5 + (4-3x)La2Si2O7 → 3La9.33+2x(SiO4)6O2+3x (0.01 =< x =< 0.13)で表された。サンドイッチ型の拡散対La2Si2O7/La2SiO5/La2Si2O7 を作製し、不要な箇所を研磨して除去することで、板状の電解質を得た。c軸配向方向の酸化物イオン伝導度を、573 K から973 Kの範囲で求めたところ、温度の上昇に伴い2.4 × 10-3 S/cm から2.39 × 10-2 S/cmへ増加した。アレニウスプロットから伝導に要する活性化エネルギーを求めると、0.35 eVであった。この値は、理論的に計算して求めた値(0.32 eV)と極めて良い一致を示しており、 予測された伝導経路が正しいことを初めて立証することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、「拡散対反応法を汎用化し、一次元配向セラミックスの作製方法を確立すること」である。先の【研究実績の概要】で述べた通り、当初の目標通りに研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りに本研究を推進する方針である。研究代表者は、これまでの研究過程でLa2SiO5/La2Si2O7拡散対だけでなく、La2SiO5/SiO2やLa2O3/La2Si2O7などの多種多様な拡散対を用いて、多結晶体を構成する結晶粒子のc軸が一軸方向に高配向したLSO多結晶体を作製している。その過程で反応拡散法が多結晶体の高配向化に極めて有効であり、LSO以外の多結晶体にも応用可能な汎用性に富む技術であることを認識するに至った。反応拡散法とイオン交換法を併用することで、Li+やNa+、Mg2+、Ca2+が一次元トンネル内を高速で伝導する一軸配向多結晶体の作製に発展させたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究における今年度分の研究費で、次年度に使用する分は試薬の購入に充てる予定である。今年度の研究で新規化学組成化合物の着想を得るに至り、さらに効率的な研究費の使用に鑑み、次年度の使用が最適であると判断したため、当該研究費が生じることになった。 平成24年度に使用する予定の研究費は次の2件である。(1)基盤研究(B)(一般);研究課題名:陽イオン伝導性結晶配向セラミックスの材料設計と開発(代表者:福田功一郎) (2)二国間交流事業・フランスとの共同研究;研究課題名:全セラミックス高速イオン伝導素子の材料設計と開発(日本側代表者:福田功一郎)本研究(挑戦的萌芽研究)の研究費は、本研究課題の遂行にのみ用いる。また他の研究費をこれに充当する計画はない。
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