研究概要 |
本研究は、無鉛圧電セラミックスの表面電荷を合成反応場として新たに利用する新規の液相セラミック合成法を提案することを目的としている。平成23年度はモデル実験としてバイオミメティック形成する骨類似アパタイト結晶の成長過程に与える表面電荷の影響を精密評価した。固相反応法により作製した(Li,Na,K)NbO3(LNKN)系無鉛圧電セラミックス表面を鏡面研磨後、エタノール、蒸留水、アセトンの順で洗浄し、乾燥後にその表面に電荷供給層としてTi層をスパッタ合成し、NaOH水溶液に浸漬した。次に、コロナ放電分極処理し、エレクトレット基材化したのち、疑似体液(SBF)中のin vitro試験に供した。これにより、SBF溶液中でNa+イオンとH3O+イオンの置換が起き、表面にOH基の生成が可能となる。その結果、LNKN基材上の最表面に形成されるチタン酸ナトリウム層を介して非晶質リン酸カルシウム(ACP)水和層が活発生成することを逐次組織観察によって確認した。さらに、反応界面でのイオンチャネルのトラップ機構を調べる目的で、熱刺激電流(TSC)測定を行い、昇温過程で得られた放出電荷密度のピーク分布と熱分析/分光分析結果とを併せて、水酸アパタイトの結晶化過程に果たす電荷の役割を議論開始した。特に、このACPの脱水過程の操作によって、結晶化水酸アパタイトの結晶配向制御が可能との見通しも得た。そこで、表面電荷供給による結晶化反応の開始メカニズムを探った。
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