研究課題/領域番号 |
23656402
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小俣 孝久 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80267640)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 半導体物性 / 光物性 / ナノ材料 / 先端機能デバイス |
研究概要 |
平成23年度は、陽イオンの規則配列したβ-AgGaO2の合成方法を中心に研究を進めた。以下に、本年度行ったβ-AgGaO2単相試料の合成、結晶構造および光学特性の評価結果を報告する。炭酸ナトリウムと酸化ガリウムを混合・成形し、600℃、1100℃でそれぞれ24時間仮焼・焼結し、固相反応法によりβ-NaGaO2を作製した。β-NaGaO2を粉砕し、KNO3およびAgNO3の混合溶融塩(温度180~300℃)中で20時間加熱することで、NaとAgをイオン交換し、β-AgGaO2を合成した。イオン交換後、長時間大気に曝したり、水による塩類の洗浄に長時間を要したりすると、回収される相はデラフォサイト型のα-AgGaO2となった。イオン交換処理の終了後直ちに洗浄し、室温で真空乾燥することでβ-AgGaO2の単相試料を得られた。β-AgGaO2の色は黄色で、拡散反射スペクトルの測定から、エネルギーバンドギャップは約2.4eVであることが示された。また、大気中での示差熱・熱重量分析では710℃以上で758℃をピークとする大きな吸熱ピークと、それに対応する重量減少が認められた。この結果はβ-AgGaO2では600℃以上の高温で、試料中のAg+が還元され金属銀となり析出し、Ga2O3を生成する分解反応が生じることが明らかとなった。しかしながら、加熱によってデラフォサイト型α-AgGaO2へと相転移することはなかった。このことは、β-AgGaO2は銀が還元され分解が生じる温度以下では、実際上安定な物質であることを示している。β-AgGaO2の精密な格子定数、原子座標などは未だ明らかでない。今後それらを詳細に調べ、エネルギーバンド構造を計算しβ-AgGaO2の電子材料としてのポテンシャルを明らかにしていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
β-AgGaO2単相試料の作製が、予想以上に難しく時間をとられた。その大きな原因がイオン交換後の洗浄中の水による相変態であることわかり、この課題は解決できた。β-AgGaO2単相粉末をターゲットとして、rf-マグネトロンスパッタによれば、現状では極めて欠陥密度が大きく光学的には満足できる質のものではないがβ-AgGaO2の薄膜を作製できることがわかったので、今後はこれを用いて研究を進めるため、以後の展開には影響がない。
|
今後の研究の推進方策 |
拡散反射スペクトルから求めたβ-AgGaO2のエネルギーバンドギャップは従来報告されている値よりも大きかった。今後は、その薄膜化を中心に検討し、良質な薄膜を用いてバンドギャップの詳細な検討を行う。また結晶構造の詳細を明らかにし、得られた構造をベースにエネルギーバンド構造を計算する。それと並行し、光電子分光・逆光電子によるエネルギーバンド構造の実験的評価も進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
試料の作製方法がスパッタ法へと変更になったが、研究計画全体への影響はなく、当初の予定通りの計画を進めていく。
|