平成24年度は、β-AgGaO2とZnOとの混晶化を中心に研究を進めた。固相反応法ではZnO-AgGaO2混晶は得られなかったので、ターゲットに以下の方法により作製したβ-AgGaO2とZnOの混合粉末を使用し、rf-マグネトロンスパッタ法により、混晶薄膜を作製した。炭酸ナトリウムと酸化ガリウムを混合・成形し、600℃、1100℃でそれぞれ24時間仮焼・焼結し、固相反応法によりβ-NaGaO2を作製した。β-NaGaO2を粉砕し、KNO3およびAgNO3の混合溶融塩(温度180~300℃)中で20時間加熱することで、NaとAgをイオン交換し、β-AgGaO2を合成した。基板に(0001)サファイア単結晶を使用し、基板温度200℃、スパッタガスに15%O2-85%Arを使用し、スパッタ時の圧力を0.5Paとして成膜することで(1-x)ZnO-x(AgGaO2)1/2表記においてx<0.35の組成域でウルツ鉱型の単相が得られた。 光透過スペクトルおよび光電流スペクトルの測定からこの混晶においてZnOのバンドギャップを2.55eVまで小さくすることに成功した。これは青色の光に対応するエネルギーであり、当初の目的であるZnOのバンドギャップを可視光域まで小さくし、可視光域での活性を賦与することに成功した。as-depo薄膜では伝導性はきわめて小さく、電気伝導度を評価するには至らなかったが、ゼーベック係数の符号は負であり、ZnO電子伝導性は維持されているものと思われる。 第一原理計算によりエネルギーバンド構造を評価しているが、準安定な構造であるため構造最適化によりウルツ型構造が崩れるという現象に遭遇し、今後計算に工夫が必要と思われる。
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