本研究は、液相系からリチウムイオン伝導性硫化物を得ることを目的としている。そのアプローチとして、P2S5とブチルリチウムを出発原料とした硫化物系リチウム塩の液相合成、リチウムイオン伝導性硫化物ガラスの有機溶媒を用いたウェットミリングによるリチウムイオン伝導性硫化物スラリーの作製、さらに、リチウムイオン伝導性硫化物ガラスの溶媒への溶解・再析出によるリチウムイオン伝導性硫化物の作製について検討した。 P2S5とブチルリチウムを出発原料とした硫化物系リチウム塩の液相合成では、アルゴン中で3時間反応させることにより、リチウムイオン伝導性硫化物塩の前駆体溶液を得ることができた。これを真空乾燥すると淡黄色の固体が得られた。得られた固体は混合物であり、真空乾燥後に固体は、室温で10-7Scm-1オーダーの導電率を示すことがわかった。 有機溶媒を用いたウェットミリングでは、トルエンを溶媒に用いた場合について検討した。ボールサイズが4mmφ、トルエンの重量比が硫化物ガラスに対して5倍としてウェットミリングした場合、得られたスラリーからトルエンを除去すると、一次粒径1~3μm、二次粒径約10μmの硫化物ガラスが得られることがわかった。 一方、リチウム含量の大きいリチウムイオン伝導性硫化物ガラスに関して、溶解可能な溶媒を探索したところ、Nメチルホルムアミドに溶解することを見出した。この溶液を基板に塗布し、150℃で真空乾燥すると、結晶が析出することがわかった。得られた結晶は、約1×10-5 Scm-1を示し、基板の上に膜として形成可能であることも確認した。また、前駆体溶液に電極活物質を分散後、乾燥させることにより、活物質表面に硫化物固体電解質をコートすることができた。このコートされた活物質を用いて全固体電池を構築したところ、良好な作動特性を示すことが確認できた。
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