研究概要 |
本研究では、擬スピノーダル分解により形成されるナノ組織構造を利用して、磁性遷移金属元素のd電子軌道自由度を制御するという新しいナノ構造制御法の提案を行うとともに、大きな結晶磁気異方性を有する磁性材料の開発を行うことを目的としている。本年度は、スピネル型磁性酸化物CoFe2O4に注目し、Feの一部をMnで置換することにより、ナノスケールで特徴的なチャッカーボード型パターンをもつ磁性酸化物を作製し、磁気特性およびチャッカーボード型パターンの形成過程や磁気的微細構造に関して透過型電子顕微鏡を用いて研究を行った。(1)多結晶試料Co0.6Fe0.9Mn1.5O3を用いて、375℃で0 , 0.5 , 1 , 3 , 10 , 80 , 340, 730 , 1000 , 1500 時間の熱処理を施した試料を作製し、チャッカーボード型パターンの形成過程と磁気特性の相関について調べた。10時間~730時間の熱処理により、約10nmから50nm程度のサイズから成る非磁性相と磁性相から成るチャッカーボード型パターンが形成されることが見出された。(2)磁気特性の評価により、チャッカーボード型パターンのサイズが大きくなるとともに保持力が増加することが明らかとなった。また、磁気転移温度も400℃から700℃まで上昇することが明らかとなった。(3)375℃で1000時間以上熱処理を施すと、チャッカーボード型パターンが崩壊し、ラメラ状に双晶構造が出現することがわかった。ラメラ状に双晶構造の出現に伴い、保持力が減少し、残留磁化の大きさも減少することが見出された。(4) CoFe2O4- CoMn2O4系の相図を作製することが出来た。
|