研究課題/領域番号 |
23656410
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研究機関 | (財)高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
小嗣 真人 (財)高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (60397990)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 光電子顕微鏡 |
研究概要 |
本申請では、溶液試料を格納可能な試料ホルダーを開発し、高輝度放射光と光電子測定装置に組み合わせて活用することで、電池電極界面における電気化学反応の「その場観察」を世界で初めて実施することを目標とした。充放電過程で最も重要な、電極界面での価数や構造の動的挙動、また電極素材の形状効果や元素依存性を詳細に解析し、二次電池の大容量化や安全性向上に繋げることを目的に、本年度は溶液対応のサンプルホルダーの基礎的な開発を行った。基板としてNiを使用し、SiN膜を透過窓として蒸着し、TiとAu膜を導電性確保のための薄膜として選定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射光を溶液に導入するための窓として、SiN膜を主とする透過窓の開発を行うことができた。問題となるのは、X線を十分に透過し、なおかつ光電子放出に十分な薄さを見積ることであるが、一般的に、光電子の透過率は伝導帯の状態密度で決定付けられることが、低速電子線透過率測定で示されているため、ブロードな状態密度を持つものが最適と考えた。また強度面としては開口サイズや材質にも強く依存することから、これらの条件に適切な材質を探索した。溶液ホルダーに用いるSiN窓は典型的な膜厚が20nm台であり、硬X線励起における光電子の脱出深さは、典型的には約50nmであることから、十分な光電子強度が期待される膜厚として上記の材料を出発点に開発を行った。作製はNTT-AT社で行った。第一段階としてドライ環境のサンプルホルダーの開発を行った。試行錯誤の結果、基板としてNiを用い、透過窓としてSiNを用いた。また導電性を確保する必要があることからTiとAuの薄膜を表面側に蒸着することで、基板の開発を行った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はサンプルホルダーを溶液仕様に拡張し、バージョンアップ版を作成する予定にしている。作成されたサンプルホルダーの真空耐圧テストや、リークテストなどの試験を行い、次に透過率(X線、光電子の両方)の試験を行う計画にしている。これらの試験が終了した後に、電極の導入を行う予定にしている。二次電池の充放電過程では、電極界面近傍において、価数や結晶構造の変化が予想されていることから、電気化学反応のその場観察の実現が期待される。なお、本年度は真空テストをPEEMチャンバー内で行うことができたため、真空ポンプの導入の予算が未使用となった。真空ポンプの導入は次年度で行う予定にいている。
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次年度の研究費の使用計画 |
真空ポンプ等に使用する計画である。今年度はPEEMチャンバー内で真空テストを実施することができたが、次年度はウェット環境でのテストを行う必要があることから、新しく真空ポンプを導入する計画にしている。
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