研究課題/領域番号 |
23656411
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
保田 和則 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (80239756)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 走査型電子顕微鏡 / SEM / 高分子水溶液 / イオン液体 / 壁面 / マイクロチャネル / エバネッセント光 |
研究概要 |
本年度はまず,走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてイオン液体の流動を観察する手法およびその流動計測を行った。そのため,金メッキを施した直径3μmの樹脂製微粒子をトレーサー粒子として用いた。SEMの観察方法には,2次電子あるいは反射電子を見る方法があるが,本研究では2次電子画像の画像よりも反射電子画像のほうが,明らかにコントラストが高く観察できることが明らかとなり,これ以降,反射電子を用いた観察を行うこととした。 次いで,液滴内でイオン液体の流動を生じさせることはたいへん困難であったため,それに代わるものとして,オープンチャネル(フタをしていない溝)の中の流れを観察することにした。流路サイズは,手始めに幅0.5mm,深さ1mmとした。その結果,SEMを用いて流動するイオン液体を観察することに成功し,チャネル内の流速分布を測定することができた。 さらに,次年度の計画を前倒しし,マイクロスケール流れにおける壁面近傍の流れ解析を行った。エバネッセント光を用い,高分子水溶液の流れの壁面近傍の流動状態を観察することに成功した。一般に水などのニュートン流体では流体は壁面表面で付着し,壁面から離れるに従って流速が大きくなる境界層を壁面近傍で形成するが,今回の観察の結果,高分子水溶液の場合は,高分子の濃度に応じて壁面近傍に流れの生じない層が形成されていることが明らかとなった。これは高分子の濃度が高いほどその層の厚みは厚く,壁面に高分子が付着しているためと考えられる。そのため,壁面上では流体は付着しており,壁面付近に流れのない層があり,壁面から少し離れた位置で急激に流れが生じるといった構造となっていることがわかった。これまでの研究から,高分子水溶液では壁面のスリップあるいは見かけのスリップ現象が観察されていたが,そのスリップは,壁面からやや離れた位置で生じているものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究によってSEMによる流れの基本観察技術はほぼ確立することができたが,使用する液体は当初の予定のニュートン流体ではなくイオン液体である。計画では水などのニュートンをカプセルに封入して観察する計画であったが,カプセルへの液体の封入が難しく,この点は今後の課題である。その代わりとして計画していたイオン液体を用いた観察を行い,オープンチャネルを用いた観察とした。対象とする流れは当初の予定の通りではないが,結果的にはSEMによる基本観察技術をほぼ確立することができた。さらに,次年度の計画として予定していた研究を前倒しで進め,時間がかかると見込んでいたエバネッセント光装置を早々に完成させることができた。その結果,高分子水溶液の壁面近傍の流動状態のあらましを観察できるようになり,この点,研究は順調にすすんでいると考える。以上のことを総合して「おおむね順調」とする判断とした。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画の通りに研究活動を進める予定である。SEMによる流動観察とエバネッセント光による壁面付近の観察を行い,当初予定の研究を完了する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究費の購入予定の高性能CMOSビデオカメラの選定に時間をかけたが,その選定作業が終了し,次年度はこのCMOSビデオカメラを購入予定である。それに加えて,CMOSビデオカメラの制御用PCにも費用を充てる。
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