研究課題/領域番号 |
23656414
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡辺 明 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (40182901)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ナノSi / ナノGe / バルクヘテロジャンクション / 光電変換 |
研究概要 |
近年,エネルギー環境問題の顕在化から太陽電池の普及が希求されており,資源量,低毒性,環境負荷を考えた場合,シリコン系の薄膜太陽電池がウェットプロセスによって製造できることの意義は大きい。本研究では,溶媒可溶性や分散性を有するナノ構造からなるシリコンおよびゲルマニウム半導体材料のインクを用いることにより,ナノサイズの接合界面が高密度に薄膜中に形成された無機半導体系バルクヘテロジャンクション型光電変換素子を形成し,そのナノ接合界面形成のための材料および手法,構造と物性の関係を明らかにすることを目的とした検討を行った。今年度は, Siナノ粒子分散有機SiおよびGeナノクラスター薄膜のレーザーアニーリングによるSiおよびSiGe合金薄膜の形成についての検討を行った。溶剤存在下SiおよびGeナノクラスター存在下でn型Siあるいはp型Si結晶をボールミル法で微細化した分散液を用いて薄膜形成を行った。紫外域から赤外域までの種々波長のレーザー光を用いてレーザーアニーリングを行い形成した薄膜の構造解析と物性測定をレーザー共焦点顕微鏡観察,顕微ラマン分光測定,およびI-V測定によって行った。粉砕によって形成した直後のSi微粒子はSi格子の歪を有していおり,単結晶Siに比べて低波数シフトしたラマンスペクトルが観測された。レーザーアニーリングにより形成した薄膜のラマンスペクトルの測定から,レーザー照射によりこの歪が解消され単結晶Siに近いラマンバンドとなることが示された。また,その効果は1064nmのレーザー光のような赤外域のレーザーほ顕著であった。Si内へのレーザー光の侵入深さがより長い赤外域の波長のレーザーのほど,より均一にSi薄膜のアニーリングを行えることが示された。レーザー波長の影響は,ショットキーダイオード型太陽電池素子を作成して測定したI-V特性における整流性においても確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画は,(1) Siナノ粒子分散有機Geナノクラスター薄膜のレーザーアニーリングによるSiおよびSiGe合金薄膜の形成,および2) レーザーアニーリング膜の構造解析と物性測定ということであった。研究実績の概要で述べたように, Siナノ粒子分散有機SiおよびGeナノクラスター薄膜を形成し,レーザーアニーリングを行い,SiおよびSiGe合金薄膜の形成を既に行っている。また,構造解析と物性測定に関しては,レーザー共焦点顕微鏡観察,顕微ラマン分光測定,およびI-V測定を行い,レーザーアニール条件が膜構造や光電気物性に及ぼす影響の検討を行っている。それによって,レーザーアニーリングにおいては,レーザー光の侵入深さが非常に重要であり,より波長の長い赤外域のレーザー光を用いることによって,良好な結晶性のSi薄膜を得ることができることを明らかにしている。また,ショットキーダイオード型光電変換素子の作成もできており,それによって,レーザーシンタリング条件の影響を明らかにできている。 以上のべたように,本研究は当初の研究実施計画に沿って,おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては以下の研究実施計画によって,目的とする無機半導体系バルクヘテロジャンクション型光電変換素子実現に向けた研究を進めて行く。・Siナノ粒子薄膜へのレーザードーピングの適用と光電気物性制御:n-Si / SiGe / p-Si ナノ接合界面からなる無機バルクへテロジャンクション型薄膜太陽電池を形成するために,ホウ素化合物やりん化合物を反応させたポリマーをドーピング減としたレーザードーピングについての検討行う。・Siナノ粒子及びSiナノ粒子ー有機Geナノクラスターハイブリッド薄膜の積層化による無機バルクへテロジャンクション型構造の形成と光電変換特性の検討: p-ドープSiナノ粒子多孔質膜へ,Siナノ粒子分散Geポリマー層とSiナノ粒子分散りん含有ポリマー層の形成を行い,レーザーアニーリングによって,n-Si/SiGe合金/p-Si バルクヘテロジャンクション型ナノ接合界面の形成を行う。SEMや顕微ラマンスペクトルによる構造解析や,光電変換特性の検討から,バルクヘテロジャンクション型構造を形成するための最適なプロセスや材料の設計の指針を明らかにする。それら基礎データに基づき,新規な無機シリコン系バルクヘテロジャンクション型薄膜太陽電池実現のための道筋を探り,得られた結果を取りまとめ,成果発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり,平成24年度請求額とあわせ,次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。今後は本年度の知見を活かして種々の材料を組み合わせて実際の光電変換素子を作成し,それら特性評価を行う計画であり,そのための材料費や物性計測のための費用としての研究費の使用計画を考えている。物品費としては消耗品費として,合成試薬・溶剤,光学部品,基板材料,およびシリコン半導体材料を購入するための費用を計画している。旅費しては,国際学会や国内学会での成果発表計算機使用料のための費用を計画している。その他の費用としては,研究成果投稿料や計算機使用料を計画している。
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