学術的観点から原子レベルにおける剪断破断のメカニズムを解明することにより、アモルファス合金の実用化における最大の問題点である塑性加工性に新たな知見を得ることを目的とし、SEM/FIB(Dual beam)装置を用い、ナノ機械試験の準備のためアモルファスナノワイヤを切断、デポ固定を実施して、これらのナノ試料に対して原子分解能を有する透過電子顕微鏡を用いて引張応力下のアモルファスナノワイヤの構造的変化を観測することを予定していた。ところが平成23年3月11日に発生した東日本大震災により、Dual beam装置、透過電子顕微鏡に甚大なダメージを受けたため、目的としていたナノ機械試験の研究に大幅な遅延が生じた。この研究遅延のため、当初予定していたアモルファス合金リボンを局所的に加熱して粘性流動からナノワイヤーを作製する手法の他に、 ガスアトマイズ法を用いることで簡便にしかも大量のナノワイヤーを作製する手法に研究の方向を切り替えた。このガスアトマイズ法では、アモルファス合金を融点以上に加熱した後、過冷却することにより粘性を増大させ曳糸性を増幅させることにより、40~2000nmの直径を持つ長尺なワイヤーを大量生産することに成功した。また、試料となるアモルファス合金はすべての合金に適用可能であり、本研究においてPd系、Zr系、Fe系、Co系アモルファス合金からナノワイヤの大量生産に成功した。また、バネ定数が規定されたAFMカンチレバーをロードセルとして用い、ナノワイヤのナノ機械的試験も遂行した結果、バルクの降伏応力に比べ80%も減少する結果が得られた。この原因はFIBによる照射ダメージやナノワイヤ固定の方法などが考えられ今後検討すべき課題である。
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