研究課題/領域番号 |
23656420
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
杉本 諭 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10171175)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | サマリウムコバルト / 保磁力 / 耐熱性 / ナノ結晶フレーク / ナノ粒子 / ナノコンポジット / 高エネルギーボールミル / 界面活性剤 |
研究概要 |
目的:永久磁石は低炭素社会の実現へのキーマテリアルとなっているが,現在最強のNd-Fe-B系磁石では,高保磁力,高耐熱性を得るため,資源リスクの高いDyを添加しなければならない。このためDyを含まない永久磁石の開発が切望されている。一方,ソフト磁性相とハード磁性相とをナノサイズで複合化させて高磁気特性を狙うナノコンポジット磁石は長年唱えられているが,磁化容易軸を一方向に揃えた異方性磁石ができず,高い磁気特性が未だに得られていない。本研究では,Dyなしでも高保磁力,高耐熱性を実現できるSmCo5系化合物に着目し,ナノ粒子の作製を目指す。さらに、Fe系ナノ粒子粉末と高速ボールミルにて混合・はく片化・バルク化することにより,Nd-Fe-B系磁石を凌駕すると期待される異方性ナノコンポジット磁石の開発を目指す。平成23年度はSmCo5のナノ粒子ならびにナノ結晶フレークの作製を試み,安定して作製できる条件を得ることを目的とした。実験方法:高周波溶解でSmCo5合金を作製し,得られた合金を粗粉砕した後,界面活性剤を添加した有機溶媒中で高エネルギーボールミル(HEBM)にて粉砕した。この際,界面活性剤の投入量,ボールと試料の重量比,HEBMの速度,粉砕時間などの条件を変化させた。得られたナノ粒子またはナノ結晶フレークの磁気特性を振動式磁力計(VSM)で測定し,組織を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。結果と考察:φ5mm,φ0.6mmの粉砕ボールを用いた2段階の微粉砕によって,高保磁力とシャープな厚さ分布を有するSmCo5ナノ結晶フレークが得られた。その保磁力は2.45MA/mであり,従来報告されている保磁力よりも高い値であった。一方,2段目の粉砕条件を変えることにより,厚さ9~49nmとシャープな分布を持ち,保磁力1.97MA/mのナノ結晶フレークも得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の報告における保磁力よりも高い2.45MA/mという保磁力をもつSmCo5ナノ結晶フレークが作成できた。また,その厚さ分布もコントロールできる2段階破砕法の条件も確立することができた。以上より,当初の計画通りおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はナノコンポジットのためのソフト磁性相を作製するため,物理的または化学的手法によりFe系合金のナノ粒子を作製し,その磁気特性,組織を調べる。具体的には,以下に示すとおりである。物理的手法においては液体急冷,高周波溶解などによってFe系合金を作製し,その合金を用いて真空蒸発法にてナノ粒子を作製する。得られた粒子はグローボックス内で回収する。一方,化学的方法では塩化物などを原料にして還元法にて作製する。すなわち,まずFe2+イオンと合金元素イオンがある水溶液を作り,これにNaBH4などの還元剤を添加して反応させる。この際ポリビニルピロリドン(PVP)を同時に加えることにより,粒子の成長を抑制する。得られた溶液を遠心分離器に入れ,高速で回転させてナノ粒子を回収する。得られたナノ粒子は,純水,さらにはエチルアルコールなどで洗浄し,真空ポンプを用いて乾燥させる。以上の過程によって得られた試料の相をXRDにて同定し,組織をSEM,TEMにて観察する。また,磁気特性をVSMで測定する。以上の結果を基に,Fe合金のナノ粒子における組織と磁気特性の関係を明確化する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度,研究に用いる設備は現有設備を使用するつもりであることから,新たな設備の導入は行わない。したがって,次年度の研究費は,主として消耗品費と学会発表などでの旅費や論文投稿料などに使用する予定である。
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