研究課題/領域番号 |
23656422
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加藤 秀実 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (80323096)
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研究分担者 |
湯葢 邦夫 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (00302208)
和田 武 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (10431602)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ナノポーラス金属 / デアロイング |
研究概要 |
金属溶湯デアロイングによるポーラス体形成過程を調べるためにTi-Cu合金をMg金属浴に浸漬した際の、組成変動、相変態、組織観察、ポーラス構造観察を行った。Ti30Cu70前駆合金をMg浴に浸漬すると前駆合金からCuが直ちにMg溶湯に溶出し、前駆合金はTiCu金属間化合物の緻密体に変化した。さらに浸漬を継続すると、TiCu化合物はTi2Cu化合物に変態し少量のポアが導入された。さらに浸漬を継続するとTi2Cuがナノメートルサイズの純チタンの単結晶に分断され、これらが部分的に結びつくことでオープンポーラス構造が形成されることが分かった。このようにTi-Cu合金がMg溶湯によってデアロイングされると、前駆合金は初期状態よりもCu濃度が低い金属間化合物に段階的に遷移していくことが分かった。次に、前駆合金の初期組織が最終的に形成するポーラス構造に及ぼす影響を調べるために、Ti30Cu70前駆合金として急冷ガラス試料と徐冷結晶試料を用いてポーラス体を作製した。その結果、前駆合金がガラス相でも結晶相でも最終的に形成するポーラス構造に明瞭な差はなく、ポーラス構造は前駆合金組織の影響をあまり受けないことが分かった。また、前駆合金をTi10Cu90、Ti30Cu70、Ti50Cu50、Ti70Cu30などとしてTiとCuの比率を変化させると、Ti濃度が50原子%以下の時にオープンポーラス構造が形成され、前駆合金中のTi濃度が低いものほど気孔率が大きなポーラス構造が形成することが分かった。また、Mg溶湯の温度が高いほどポアサイズやリガメントサイズが大きくなることが分かった。これらの傾向は水溶液中デアロイングと同様であり、金属溶湯中デアロイングによるポーラス構造の形成メカニズムが水溶液中デアロイングと同じ固液界面での自己拡散によるものであること示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ti-Cu合金のMg溶湯によるデアロイング現象を、組成変化、相変態、組織観察、反応速度解析など視点から調査し、金属溶湯デアロイングによるポーラス構造の形成過程を解明することができている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度において金属溶湯デアロイングによるポーラス金属の形成過程を明らかにすることができた。平成24年度はこの原理を応用することで、Ti以外の様々な金属・合金のポーラス体を作製し、それらの機能性を評価する。また、医療用材料に用いられているステンレス鋼、コバルト合金、チタンニッケル合金に対して金属溶湯デアロイング法を適用する。これらの合金表面からのNi等の毒元素の脱成分や部分オープンポーラス化を試み、表面処理技術としての金属溶湯デアロイングの応用への研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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