研究課題/領域番号 |
23656423
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荒木 孝二 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (40134639)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 有機発光材料 / 発光色制御 / 励起状態 / 固相発光 / ESIPT |
研究概要 |
基本骨格である2-(2'-ヒドロキシフェニル)イミダゾピリジン(HPIP)および置換HPIPを合成し、種々の高分子フィルムに混合した。それらのESIPT発光特性を詳細に検討し、固相でのESIPT励起状態に対する外場の効果を利用した発光色制御の実現に向けた基礎的な知見を得た。1.無置換HPIPと置換基の異なるHPIP誘導体を合成した。HPIP誘導体の励起状態解析をおこなったところ、発光に関わるESIPTおよびIPTのエネルギー準位が、置換基のドナー/アクセプター性パラメータであるHammett σに対して良い直線性を示したことから、ESIPT発光特性は置換基の電子特性から説明できることを明らかにした。2.無置換HPIPと、すでに結晶多形に依存した異なる発光を示すことが明らかとなっている6-シアノHPIPを選択し、極性の異なる高分子マトリクス(ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン)中に混合(1 w%)し、キャスト法およびスピンコート法で薄膜を作成した。固体ESIPT発光を測定したところ、無置換HPIPは高分子の種類にほとんど依存しなかったのに対し、6-シアノHPIPは極性の増大にともない発光の長波長シフトが観測された。一方、加熱や外部電場に対してはいずれの薄膜についても明らかな発光変化は観察されなかったことから、マトリクスと外部場の相互作用の詳細な検討およびそれに基づく基材の選択/設計が必要であることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発光制御に向けて、外場の効果に関する基礎的な知見を収集することを目指した初年度の目的については、一部未達成ではあるものの、想定以上の成果を得られた部分もあり、おおむね達成することができた。1.置換HPIPの合成については、置換基の種類や導入位置を変えた各種置換体を合成し、初期の目的を達成した。2. 高分子マトリックス場については、外場応答性を示すのに必要なHPIPの構造要因についても明らかにすることができ、初期の目的以上の成果が得られた、しかし、電場については、検討を行ったが現在のところ応答は確認できなかった。3.二重発光の発現については、その現象を確認し、白色発光の実現に向けた検討を現在進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
発光色制御が可能な高効率有機固体発光材料の開発に向けて、以下の検討を継続して行う。1. 2-(2'-ヒドロキシフェニル)イミダゾピリジン(HPIP)および置換HPIPについて、高分子マトリックスの場による発光効率および発光色変化を整理し、高効率有機固体発光の制御法を確立する。2. HPIP以外の類縁体についても検討範囲を拡大し、ESIPT過程を外場で制御して、発光色や発光効率が制御可能な高効率有機固体発光材料の開発を目指す。3.現在効果が確認できていない外部電場の効果についても、引き続き検討を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究遂行に必要な試薬、器具などの消耗品、および成果発表のための旅費として使用する。
|