平成24年度は測定の準備を進めたが,液体ヘリウムの実験系を他の研究に使用する必要が生じたため,超流動実験は未了の点が多く残されている. 関連した原子サイズ系の研究では,以下の成果を得ている.(i) MgおよびFeを対象として接点破断の分子動力学シミュレーションを実施し,単原子接点の形成について,その結晶方位依存性および温度依存性を明らかにした.特にFCC金属で見出されたpentagonal nanowireの形成がHCPのMgの破断でも観測されることが明らかになった.(ii) Niの単原子接点形成の温度依存性を調べるために,室温から液体ヘリウム温度に亘ってコンダクタンスヒストグラムの変化を測定し, 極低温で観測されるNiの単原子ピークが,約50Kで消失することを見出した.(iii) Znの接触過程におけるコンダクタンス変化を室温で測定したところ.1G0程度のコンダクタンスを示す異常に長いプラトーが観測された.この結果はナノワイヤー形成では理解できず,長大プラトーの成因を検討中である.(iv) Yはd価電子が一つしかないので,単原子コンダクタンスからdチャネルの透過率を決定できる可能性がある.今回Y接点のコンダクタンス測定を室温超高真空中で実施したが,結果が収束せず,結論は持ち越しになっている.
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