研究課題/領域番号 |
23656432
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
望月 正人 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10304015)
|
研究分担者 |
三上 欣希 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40397758)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 残留応力 / 結晶粒 / 圧子 / インデンテーション / 荷重・変位曲線 |
研究概要 |
本研究では,結晶粒レベルでのミクロオーダーの応力・ひずみ特性ならびに残留応力分布の測定方法の開発と,その適用による機械的特性の不均質性と巨視的な強度特性との関係についての検討・検証を行った. まず,微小領域での応力・ひずみ特性の推定方法として,これまでに,球圧子によるインデンテーション試験で得られる荷重・押込み深さ曲線から応力・ひずみ特性を推定する方法が提案されているが,この方法では,除荷過程における曲線の傾きからヤング率を決定し,試験片と球圧子との接触半径や接触圧力を,材料の加工硬化指数と関連づけることにより加工硬化指数を決定するが,球圧子では試験片との接触領域が大きくなるため,決定したヤング率や加工硬化指数が平均的なものとなってしまうこと,また,押込み荷重を小さくすれば接触領域を小さくすることができるが,荷重が小さくなると測定中の振動の影響が大きく現れるため,精度の良い荷重・押込み深さ曲線を得るには測定装置の大幅な改良等が必要となることを確認した.そこで,個々の結晶粒内や界面の両側に対するミクロンオーダーでの機械的特性の分布を測定できるようにするため,圧子の形状を三角錐や四角錐など先端部が鋭利な形状を用いることを試み,得られた荷重-押込み深さ曲線から応力-ひずみ特性を測定する方法に挑戦した.三角錐圧子を用いた応力・ひずみ特性の測定に関しては,複数の三角錐圧子による荷重・押込み深さ曲線とインデンテーション試験を模擬したFEM解析から降伏応力や加工硬化指数を同定する方法と,球圧子での理論を応用した方法,すなわち,三角錐圧子で得られる圧痕からそれに相当する球圧子を仮定することによる方法をハイブリッド的に組み合わせた測定方法の開発を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 従来から提案されている,微小領域での応力・ひずみ特性の推定方法として,球圧子によるインデンテーション試験で得られる荷重・押込み深さ曲線から応力・ひずみ特性を推定する方法に対し,この方法では,除荷過程における曲線の傾きからヤング率を決定し,試験片と球圧子との接触半径や接触圧力を,材料の加工硬化指数と関連づけることにより加工硬化指数を決定するが,球圧子では試験片との接触領域が大きくなるため,決定したヤング率や加工硬化指数が平均的なものとなってしまうこと,また,押込み荷重を小さくすれば接触領域を小さくすることができるが,荷重が小さくなると測定中の振動の影響が大きく現れるため,精度の良い荷重・押込み深さ曲線を得るには測定装置の大幅な改良等が必要となることを明らかにしたこと.(2) その結果を受け,個々の結晶粒内や界面の両側に対するミクロンオーダーでの機械的特性の分布を測定できるようにするため,圧子の形状を三角錐や四角錐など先端部が鋭利な形状を用いることを試み,得られた荷重-押込み深さ曲線から応力-ひずみ特性を測定する方法に挑戦し,三角錐圧子を用いた応力・ひずみ特性の測定に関しては,複数の三角錐圧子による荷重・押込み深さ曲線とインデンテーション試験を模擬したFEM解析から降伏応力や加工硬化指数を同定する方法と,球圧子での理論を応用した方法,すなわち,三角錐圧子で得られる圧痕からそれに相当する球圧子を仮定することによる方法をハイブリッド的に組み合わせた測定方法の開発方針を決定するとともに,具体的開発を進めたこと.
|
今後の研究の推進方策 |
初年度(平成23年度)においてインデンテーション法による応力・ひずみ特性ならびに残留応力測定方法の確立を図るために,インデンテーション圧子の形状や材質を種々変化させることにより,荷重・押込み深さ曲線と材料特性との相関性に関する基本的な検討を進めた. 本年度においては,数値解析専用プロセッサを新たに導入することにより,この装置を援用・駆使し,機械的特性の影響や異方性の影響,さらには機械的特性の不均質性が巨視的な強度特性に及ぼす影響を考慮できる手法を逆問題的に求めていく.
|
次年度の研究費の使用計画 |
数値解析専用プロセッサを新たに導入することにより,この装置を援用・駆使し,機械的特性の影響や異方性の影響,さらには機械的特性の不均質性が巨視的な強度特性に及ぼす影響を考慮できる手法を逆問題的に求めていく.また,インデンテーション用試験片などを用いて,実験的に数値シミュレーション結果の妥当性を確認する.さらに,得られた成果は纏めつつある昨年度の成果と合わせて直近の学会などで適宜タイムリーに発表を進める. なお,本年度の研究費に若干の残額(二千円)があるが,研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったためであり,研究計画に変更はなく,前年度の研究費も含め,当初予定通りの計画を進めていく.
|