結晶粒レベルでのミクロオーダーの応力・ひずみ特性および残留応力分布の測定方法の開発と,その適用による機械的特性の不均質性と巨視的な強度特性との関係についての検討・検証を行った.すなわち,微小領域での応力・ひずみ特性の推定方法として,これまでに提案されている球圧子によるインデンテーション試験で得られる荷重・押込み深さ曲線から応力・ひずみ特性を推定する方法では,除荷過程における曲線の傾きからヤング率を決定し,試験片と球圧子との接触半径や接触圧力を材料の加工硬化指数と関連づけることにより加工硬化指数を決定するが,球圧子では試験片との接触領域が大きくなるため,決定したヤング率や加工硬化指数が平均的なものとなってしまうこと,また,押込み荷重を小さくすれば接触領域を小さくできるが,荷重が小さくなると測定中の振動の影響が大きく現れるため,精度のよい荷重・押込み深さ曲線を得るには測定装置の大幅な高精度化が必要となることを確認した.その上で,個々の結晶粒内や界面の両側に対するミクロンオーダーでの機械的特性の分布を測定できるようにするため,圧子の形状として先端部が鋭利な形状を用いることを試み,得られた荷重-押込み深さ曲線から応力-ひずみ特性を測定することを種々の荷重負荷法の下で試みた.ここで,四角錐圧子を用いた応力・ひずみ特性の測定として,複数の四角錐圧子による荷重・押込み深さ曲線とインデンテーション試験を模擬した数値解析から降伏応力や加工硬化指数を同定する方法と,球圧子での理論を応用した方法,すなわち,四角錐圧子で得られる圧痕からそれに相当する球圧子を仮定することによる方法をハイブリッド的に組み合わせた測定方法を提案し,さらにそれらの検証を実験的および数値解析的に行うことにより,妥当性を確認することができた.
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