太陽の光エネルギーと熱エネルギーを同時に利用可能な、太陽電池と熱電材料を接合したハイブリッド太陽光利用素子を試作した。太陽電池には薄くて効率が高くコスト削減が可能なCuInAlSe(CIAS)系を用い、熱電材料には室温付近で性能が高いBiTe系に変わる材料として、環境負荷の少ないFe系を利用した。また、基板には比較的高温まで耐えられるポリイミドを用い、太陽電池や熱電材料の低温合成を試みた。 太陽電池はパルスレーザー法により作製したが、300℃以下の低温での合成が困難であり、CIAS(p型)とZnO-Al(n型)との界面抵抗が高く、目的の発電効率は得られなかった。一方、熱電材料ではゼーベック係数が1000μV/Kを超える材料開発に成功した。この熱電材料の抵抗率(実測値)からパワーファクターPFを計算すると5mW・m-1・K-2を超え、熱伝導率(文献値)から予想される無次元性能指数ZTは3を越えており、熱伝導率の実測値が得られれば、熱電材料の実用化に向けて大きな1歩となる可能性が高い。 また、熱電材料は250℃以下での合成が可能であり、合成の簡略化と低温プロセスによるコスト削減が可能となる。 試作したハイブリッド素子部分に、人体を数cmまで近づけると数μVの発電が確認されたことから、熱電材料の赤外線センサーへの応用が期待できる。また、高いZTが実現できれば、この熱電材料を用いたセンサー以外に、熱電発電や熱電加熱・冷却が可能となり、シート型エアコンが作製できる可能性がある。
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