本研究は、従来手法ではサイズや試料強度の上限や微細化の下限に阻まれるナノ構造バルク材の新たな作製法の展開を目指し、微細構造を積み上げるボトムアップ型プロセスとしての「めっき」を利用したプロセスの検討を行う。すなわち、転位運動を阻むレイヤーを板状試料表面に平行かつ周期的に導入することで、めっきにより作製した層内での転位運動の効果的な抑制が期待できる。このような1次元的変調構造を実現した高強度ナノバルク板材の作製手法確立を目指すとともに、その機械的性質の支配因子を理解することを目的とする。 初年度は「自動ナノ厚さ多層めっきバルク作製装置」を開発した。100層を越える多層めっき作製が安定的に作製できることを確認した。作製したCu/Ni 多層めっきの微細構造を同位体顕微鏡分析、ラザフォード後方散乱分光法によって評価し、機械的性質を明らかにするため、ナノインデンテーションを試みた。組織情報を得るためにFIB加工後に透過型電子顕微鏡観察およびSEM-EBSD観察を行なった結果、積層したCuとNiが同一の方位を有する整合積層領域が多数存在することが明らかとなった。整合積層はめっき膜生成時に原子層が整合に形成されたものと推測される。整合積層領域は積層数にして5-10積層程度であり、積層面内方向も同程度のサイズであった。また、各層内部に双晶が形成されている領域も見出される。これらの整合/非整合構造の分布と形態をパルス幅や電流密度などのめっき条件で制御することで、変形能と強度の制御が期待される。
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