昨年に引続き、カーボンナノチューブ(CNT)の表面処理により、グラフェン表面に、ある程度制御されたナノサイズの表面欠陥を導入し、そこへ意図的にCr炭化物の局所的析出を試みた。 CNTが均一に分散したCuCr/CNT複合材料を作製し、炭化物形成による界面結合性を確かめるために引張り強度を評価した。Crを添加していないCu/1%CNT複合材料の場合、引張り強度はCuより減少し、破断面でも引き抜かれたCNTが観察され、CNTのCuマトリックス間の弱い界面結合性によりマトリックスからCNTへの効果的な荷重伝達が生じなかったことが引張り強度の減少の原因と考えられる。一方、CuCr/CNT複合材料の場合、測定した引張り強度はCuCrに比べ、CNTの含有量の増加に伴い高い値を示した。また、破断面のCNTでは、内部層が現れたものと朔性変形したCNTも観察され、CNTの外面の破壊が生じCNT内部層が引抜かれた結果で、マトリックス側の荷重がCNTに伝達され破断したものと考えられる。TEM観察により、Cr炭化物の形成を確認した。また、CuCr/CNT複合材料の熱膨張係数は体積分率の増加と共に熱膨張係数は減少する傾向にあった。従って、マトリックスとCNTの界面でのCr炭化物の生成によって、界面結合性が改善されたことを裏付ける結果と考えられる。 これらの結果から、Crを微量添加することにより、界面にCr炭化物が生成され、界面結合性が改善できたと考えられる。
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