研究課題
本研究では、合金化溶融亜鉛メッキプロセスで形成されるFe-Zn系金属間化合物の相安定性について、常温から約400℃までの温度域における加工応力条件における応力誘起変態の可能性と、これを考慮に入れた変形モデルによる金属間化合物相の塑性加工の新しい可能性を探ることを目的としている。Fe-Zn系には、Γ、Γ1、δ1、ζという4種類の金属間化合物相が存在するが、いずれもα鉄(BCC)の鉄原子を規則的に亜鉛原子で置換した、多くの原子から構成される規則格子であり、この金属間化合物はある温度と応力条件で塑性変形を起こすことが最近の研究から判ってきた。本研究では、塑性変形が応力誘起変態による結晶対称性変化と関与しているとの仮説に基づき、高圧条件下における結晶回折を利用してその安定性を検討することが目的である。昨年度までに、ダイヤモンドアンビルを用い、高圧負荷の条件においてX線回折装置を用いた粉末X線回折実験を行って、金属間化合物の結晶の圧縮性と結晶構造変化を調べた。その結果、昨年度までにFe及びAlを溶融亜鉛中に添加した際に析出したいわゆるドロス相として生成したΓ1相とζ相を試料として用い、常温で常圧から30GPaまで圧力条件での測定を行い、Γ1相では相転移が起こらないこと、ならびにζ相ではhcp相と思われる相への相転移が存在することを見出している。本年度は、昨年度までに得られた低圧/高圧相のモル体積や体積弾性率の実験値から、各金属間化合物相の物性値を推測し、Fe-Zn二元系合金の計算状態図的アセスメントをもとにした混合自由エネルギの計算から相安定性の圧力依存および相転移圧を推測した.
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Scripta Materialia
巻: 69, No. 4 ページ: 307-310
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