研究課題
同一の規則結晶構造をベースとしながら空孔サイトあるいは侵入型元素の有無という違いで異なる相として区別される金属間化合物の組み合わせとして、ホイスラーとハーフホイスラー、L12とE21の二組に注目し、規則構造の「類似と相違」という観点から劇的な物性の変化や新機能の発現に挑戦することが本研究の目的である。最終年度では、主にL12-Ni3Alに侵入型元素Cを添加したE21-Ni3AlC1-x(x: Cの欠損)を対象として、単結晶を用いて機械的性質に及ぼす侵入型元素の影響を調べて評価を行った。Ni3AlC1-xのC固溶限は約8 at%であり、Ni3Alの体心位置にあたる侵入型八面体隙間の一部にのみC原子が優先的に固溶される。Ni3Alは包晶反応で形成することが分かっているため、単結晶作製には光学式浮遊帯域溶融法を用いた。単結晶サイズの制約により機械的性質は室温における圧縮試験で評価し、荷重軸として(111)面すべり系のみ働く[001]方位近傍、(111)面と(100)面のすべり系が働く[123]方位近傍とした。C原子の固溶濃度の増加に伴ってNi3Al~Ni3AlC1-xの降伏応力は上昇するが、約3 at%付近のC濃度において降伏応力がC濃度に対して不連続かつ急激に増大するGapが存在することを見いだした。ひずみ速度急変試験を室温と高温で行い、転位のすべり運動に対する活性化体積を算出したところ、やはり約3 at%Cにおいて急激に大きくなることが分かった。L12-Ni3Alから約3 at%未満のCを固溶したE21-Ni3AlC1-xでは、(111)すべり面上を運動する1本の転位の弾性応力場は単独のC原子の弾性応力場からのみ影響を及ぼされるが、約3 at%以上では複数のC原子の弾性応力場が重なり、これらと転位が相互作用するために塑性変形抵抗が急激に増大することが原因として示唆される。
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MRS Symposium Proceedings "Intermetallic based Alloys; Science, Technology, and Applications" (Materials Research Society)
巻: 未定 ページ: in press