研究課題/領域番号 |
23656458
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
菊田 浩一 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00214742)
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キーワード | 粒子分散 / セラミックス / 造形プロセス |
研究概要 |
昨年度の検討では、ディスペンサー印刷によって高粘度なセラミックススラリーを塗布可能であることを見出し、固体酸化物型燃料電池のカソード層の印刷に応用した。今年度は、より厚い膜厚を持つアノード層や緻密な組織が必要である電解質層までもこのディスペンサー印刷法を適用するための検討を行った。スラリー作製にテルピネオールなどの有機溶媒を用いることで、アノード層、及び、電解質層の印刷を基板上に行うことができたため、まず、通常の加熱処理によって積層体の処理を行った。しかし、基板と上部に作製した積層体との熱膨張のミスマッチによって亀裂が入り、目的とする二層積層体は作製困難であった。そこで、基板と積層体との間に剥離層を形成した後に印刷を行い、形成した層を乾燥後、剥離層を除去することで独立した積層体とすることができた。これを焼成することで、300ミクロン以上の膜厚を持つ多孔質のアノード層と20ミクロン程度の緻密な電解質層からなる積層体が作製できた。さらに、上部にカソード層を積層、乾燥、熱処理することでセルを作製することが可能となった。発電特性の評価により、これまでのグリーンシートから作製した平板型燃料電池とほぼ同等な性能を得ることができた。 しかし、この亀裂を抑制したプロセスを見出すために時間がかかったため、年度内に光による熱処理ができなかった。そこで、予算の一部を繰り越して来年度にこの検討を行う予定で検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、高度に分散した粒子を用いた新しい印刷法を開発して、さらに光処理による加熱によって特徴的な構造を作製することを検討目的としている。現在、粒子を有機溶媒中に分散させて粘度などを調節し、ディスペンサーによる印刷と通常加熱を行うことによって基板上に燃料電池セルの印刷が可能となってきた。しかし、現段階では光処理については、処理条件を詳細に検討できていないため、最終的な目的には達していない。今後、通常加熱から光処理に変更して進めなければならないが、急速な表面からの加熱による応力の影響を緩和しながら熱処理を行うためには、さらに検討が必要な状況である。 また、こうして研究の進捗の遅れから、発表についても少なくなっている現状である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、ディスペンサー印刷法を利用してセラミックスの積層構造を作製することには成功しているため、今後は通常加熱によらない光照射による熱処理を中心に検討を行う。赤外加熱を用いた場合やさらに紫外線ランプによる照射を合わせて行うことで、燃料電池を中心課題とした目的構造を作製することを検討する。出来上がったセルについては燃料電池としての発電特性評価からその有効性の有無を確認したい。 熱処理を光で行う場合には、その構造の変化が従来の熱処理とは大きく異なる場合があるため、合わせて比較検討を行いたいと考えている。 さらに、得られた知見を学会、論文などにおいて発表することを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
繰り越しを行った研究費については、セル作製と光処理に必要な消耗品や試薬の購入、さらに外部への学会、論文発表に伴う費用に充てることを計画している。
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