これまでの検討によって、高分散スラリーを用いた非接触印刷法によって、セラミックスの組織制御を伴う固体酸化物型燃料電池の作製が可能であることを見出した。これを発展させるために、印刷法の利用と紫外線や赤外線の照射を組み合わせた積層構造の作製について検討を行った。これまでのスラリーの他にUV硬化樹脂を用いて、紫外線によるセラミックス層の作製を検討した。セリア‐UV硬化樹脂からなるスラリーを用いた場合について検討を行ったところ、他の粒子においては比較的容易な硬化反応は進行しなかった。これは、酸化セリウムの紫外線吸収能が非常に高く作製した層が比較的厚いために、十分な硬化が進行しなかったことが原因と考えられる。一方、赤外線照射については、基板上に非接触印刷を行うことによって作製した層に対して集光式の赤外線照射を行った。この場合、非常にエネルギー密度が高いために、添加有機物が燃焼するなど大きな影響を与え十分な緻密性を持つセラミックス層とすることができなかった。以上のように、印刷による塗布後の後処理としての光照射は、本研究で用いた装置では十分な制御ができないために問題が多く、位置選択的な結晶化のためにはより波長と出力を広い範囲で制御できる光源が必要と考えられる。また、さらなる有機ポリマーなどの添加成分の開発も必要であることがわかった。 本年度、特に独立した積層体を作製するために、基板上での印刷において分離溶解層をあらかじめ作製してその上に薄膜作製を行い、積層体を基板と分離後に焼成するプロセスを検討した。その結果、通常は基板との相互作用で破損してしまう積層体も独立した積層セラミックスとして作製することができた。このようなプロセスは、さらに発展させることで、これまでにないセラミックス合成法としての進展が考えられる。
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