研究概要 |
巨大ひずみ加工で導入する高密度な格子欠陥を利用して、素材の力学特性を損なわない、低温(400 ℃以下)での固相拡散接合 または 固相反応接合の可能性を検証する。 結晶粒径・反応層厚さの変化から拡散・反応のための活性化エネルギーを求め、格子欠陥の種類・量と低温固相接合の程度との関係を明らかにすることを目的とする。 平成23年度は、固相拡散接合の可能性を検証するため、組織が単純であり、合金元素や析出物の影響を排除できる、純Fe(極低炭素鋼Fe - 11 ppmC)を主に供試材として用いた。 純Feを巨大ひずみ加工の一つであるHPT(High-Pressure Torsion)加工することで、歪量を制御して高密度に格子欠陥を導入した。 拡散接合は、結晶粒界の移動(原子の拡散)が重要であり、その駆動力となる格子欠陥の定量化が必要となる。 そのため、種々の条件・温度でHPT加工・熱処理した試料において、SEM-EBSD法(粒界密度, 結晶方位差(GN転位密度)等), X線回折法(結晶子サイズ, 転位密度 等)により格子欠陥の定量化を行なった。 また、密度や電気抵抗の変化についても調査を進めている。 HPT加工まま材では、結晶粒径200 nm(SEM-EBSD法), 転位密度10 15 m -2(X線回折法)もの高密度格子欠陥が導入されていることが明らかとなった。(高密度格子欠陥の導入に伴い、引張強度1.4 GPaにまで高強度化した。) 拡散接合の程度については、十分な接合強度が得られておらず、試料の組成, 巨大ひずみ加工の条件, 接合温度 等をさらに調整する必要がある。
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