研究課題/領域番号 |
23656464
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菅沼 克昭 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (10154444)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 常温接合 |
研究概要 |
本研究課題に対して、今(23)年度は、(1) Ag ナノ粒子合成、(2) インク化・塗布、(3) 表面反応評価について検討した。(1)では、3nm 程度から100 nm 程度の範囲で Ag 粒子径を変化させる。また、Ag ナノ粒子に付着する分散剤の量を評価し、分散剤の付着量の影響を各種化学分析により評価した。(2)では、有機溶剤を用いて。インク中の Ag 濃度、増粘剤の添加量をパラメータとして、インクの粘性、ポリマー配合量を制御した。また、基材のCu 板を研磨と酸処理により清浄することで異なる表面粗さを持つ3種類の基板を用意し、塗布性(Ag ナノ粒子が基材上で良好にぬれ広がる条件)を探索した。上記3項目における進捗状況はいずれもまずまずで、ナノ粒子の合成法やインク化・塗布方法の最適化はすでに達成している。また、開発したインクを用いて実際に接合体同士を接合し、接合強度を評価した。常温での最大接合強度は、10 MPa程度, 220℃程度まで加熱すると、25 MPa以上の接合強度を達成した。しかしながら、インクを滴下して接着体同士を接合した瞬間からインクが濡れ広がりうまく接合できない点や上下もしくは左右からインクを挟むことによりナノ粒子保護膜除去剤が長時間にわたり粒子周辺に残ることから、短時間で強固なキュアができない点など改善すべき点が残っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ag ナノ粒子合成(粒径)、インク化・塗布条件、基板表面粗さ等をそれぞれパラメータとして制御し常温接合ついて検討した。中間報告時の現状では、常温接合で最大接合強度が10 MPa程度、220℃程度まで加熱すると、25 MPa以上の接合強度を達成している。しかしながら、現在、接着体同士の間での濡れ性やナノ粒子分散剤の除去剤が粒子周辺に長時間残ることなど数か所で改善点があり、行き詰っている、これらの点に打開策を見出し、よりよいインク濡れ性と効率のよいナノ粒子分散剤の除去方法を開発することができれば、加速的に研究が進むものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、当初の計画通り、(1)インク化・塗布:インク化の条件設定、塗布条件の最適条件設定に取り組む。 (2)表面反応評価:前年度から継続し、Ag ナノ粒子と Cu 基材との表面反応を解析する。特に、Cu表面の粗度、Ag、Au、Ni などの金属めっき膜を形成する場合の効果などを FE-SEM により詳細に評価する。 (4) 常温接合:2枚の Cu 板(4mm 角、1mm 厚さ)を用い、表面状態を(2)と同様に変化させ貼り合わせ接合を行う。この時、Cu 板は静置し上に任意の重りを載せて固定加圧力とする。エタノール洗浄後の時間をパラメータとして、接合せん断強度の変化を評価し、組織変化との対応を行う。(3)で施した Cu 板上の金属めっきの効果を調べ、常温接合に対する影響を調べる。接合界面の微細組織は、FE-SEM に加えてイオンミリングで試験片を作製し TEM 観察により評価する。 接合の基本は加熱を行わない常温における接合とするが、接合メカニズム、焼結のメカニズムの検討をするために、メタノール洗浄後に接合試験片を大気中において 150℃程度まで加熱し、同じ荷重条件で接合強度、組織変化を調べる。150℃は従来のはんだ付けも難しい温度であり、工業的な視点からも十分に実用価値がある。以上の評価を通して、Ag ナノ粒子インクを用いた金属の常温接合の可能性を明らかにし、より強固な接合を生じるためのナノ粒子インクの設計指針、接合プロセスの制御法に関する指針を確立する。既に常温においてもナノ粒子間の焼結・接合は実際に連続的に生じ、数 nm のナノ粒子がポーラスであるが数百 nm のサイズにまで 2 時間程度で成長することを解明している。本研究における本質的な解析は、バルク平面上でナノ粒子が付着接合し得るか、する場合、何が接合の性質を左右するパラメータになるのかを解明することにある。
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次年度の研究費の使用計画 |
ナノ粒子の原料やインク材料の消耗品として80万、学会等の報告渡航費として旅費20万、および謝金やその他の諸費用として40万計上する。
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